お知らせ
大槌・町営末広町住宅「うたっこきぐべし♪おでんせ!コンサート」
- 2022.9.4
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声楽家/アルト谷地畝晶子さん、ピアノ阿部夕季恵さんと、3度目の訪問の町営末広町住宅集会所。私たちの足では、おしゃっちから5分程しか離れておらず、目と鼻の先に思えたのでした。けれど、打合せではなく公演として初めて伺った昨年11月。集会所の外に、ずらりと並んだ歩行補助器や手押し車を見て、初めて、ここで開催してほしいと言われたU会長や大槌町社会福祉協議会Iさんの、その理由がわかりました。家の扉を出て、歩行補助器につかまりながら、エレベーターをゆっくり降りてくるおばあちゃん達。これは、おしゃっちまで来てください、と私たちが気軽に言ってしまっては、そんな遠いところまでは、とどんなにお誘いしても来られないわけです…。一度目は小さな集会所に満員御礼、二度目はぐっと少ない人数となりましたが、さて三度目は?…開演ぎりぎりに飛び込みで来てくれた方もいらして、開演時には程良く満席になりました。
小さな集会所に広がる谷地畝さんの歌声に、みなさん、ほ~と声にならないため息が。でたでたつきが~♪でおなじみの、「月」に合わせて、軽く身体を動かして丹田を意識した深呼吸の練習をしてみたり、指遊びをしながら脳トレをしてみたり。ぐーっと身体を伸ばすことひとつとっても、音楽に合わせて、身体を伸ばしていくと、あれれ、とても気持ちよーくいつもよりも伸びているような気が…?脳トレは簡単なように見えて、なかなか一度では出来ない方が多く…あれ?あれれ?とみなさん苦笑いしつつも、挑戦の気持ちが大事です!と励ましながら、大笑い。
壁には、お祭りのなかった昨秋、それでも住宅の前まで踊りに来てくれた松の下太神楽や、臼澤鹿子踊の写真が飾られています。臼澤鹿子踊の稽古場で太鼓を聴かせていただき、ショパンの「マズルカ」と通じるものを感じました、と阿部さん。マズルカは、遂にポーランドには帰らなかったショパンの、お母さんの故郷に伝わる民俗舞曲。言い替えればそれは民俗芸能/郷土芸能の音楽。ただ異国の音楽、というだけでなく、ショパンがこの「マズルカ」をどんな想いで作曲したのか、この曲を演奏しながらどんなことを思い浮かべていたのか、そんなことを想像しながら聴くのは、またこれまでと少し、違って聴こえるような気がしました。
こちらでもラジオ体操をご一緒した後は、演歌・歌謡曲も聴きたいなと会長に言われ、今回挑戦していただいたのはテレサ・テン「時の流れに身をまかせ」。この曲でも一緒に歌う声があちこちから聴こえてきました。聴き慣れた曲、歌い慣れた曲、よくよく歌詞を聴くとなかなかに激しい世界でもあるのですが…そこは歌の世界。ついつい鼻歌がついて出てしまうのは、楽しんでくださっている証しかな、と思えました。
写真は「みなさん、ハワイに行かれたことのある方、いらっしゃいますか?」とお聞きしての「憧れのハワイ航路」。「レイを掛けると、それだけで不思議と楽しくなっちゃうんです」と歌い出すと元気な手拍子が。始まった途端に、空気がからりと明るくなる歌、大事な存在です!帰る頃には、みなさん、ほっと笑顔になって、ゆっくりゆっくりと。みなさんのペースに、こちらから合わせて行くことで、足を運んでいただくことができる。そのことを前々回、学ばせていただいたこちらの会場。今回、また、たくさんお集まりいただけて、ほっとしました。そしてプログラムの始めと終わりに、童謡を置いたことも、みなさんの緊張をほぐしたり、どこか懐かしい気持ちを共有できたりと、とてもよい選曲であったことが、みなさんの表情から伝わってきました。〈この公演は、岩手県「令和4年度被災者の参画による心の復興事業」補助金を受けて実施しました〉