お知らせ

大槌・屋敷前アパート「うだっこきくべし♪おでんせ!コンサート」

2022.9.5

もう何度も伺わせていただいている大槌・県営屋敷前アパート集会所へ。〈共催:屋敷前アパートあじさいお茶っこ会、源水お茶っこの会、協力:大槌町社会福祉協議会、(一社)槌音〉。出演は、引き続き声楽家/アルトの谷地畝晶子さん、ピアノの阿部夕季恵さん。

「集会所が狭く、コロナ対策が充分にできない」ために、地域の集会所ではお茶っこもコンサートも諦めてきた源水地区。隣り合う元中学校跡地に出来た、5階建ての県営屋敷前アパートは、元々高齢の方が多く、この1,2年で亡くなられた方や、施設に入られた方、子供さんと同居することになった方など、以前はいつもコンサートへいらしてくださっていた方も、ぐっと減ってしまいました。それなら、一緒に楽しんでいただく機会を作れませんか、とこちらから提案し、大槌町社会福祉協議会のご協力もいただいて、今回はじめての試みとなりました。

震災前から、この地域に暮らしていた源水のみなさんと、震災がきっかけで、町内あちこちからここに入ることになった屋敷前のみなさん。仲良くなるきっかけ、一緒に何かをする機会と言うのは…何年経ってもあるようでないもの、でもあったようです。もちろんその様子を、大槌町社会福祉協議会さんは以前から気に掛けてもいらしたようで、今回、外の人間である私たちから思いきって声を掛けることで、なにか新しいきっかけになればと烏滸がましいかもしれませんが、考えたところでした。

直前に、源水地区民生委員Kさんの提案で、「いつも源水地区のお茶っこ会で、始めにやる脳トレを、今回もちょっとやってみてもいい?」とのこと。それはぜひ、とお願いしました。内容は、というと「おさるの籠屋」の歌詞に出てくる「エ~ッサ エ~ッサ エッサホイサッサ♪」の「サ」を、別な文字に替えて歌ってみる…というもの。片手ずつをグーにして前に伸ばしたり、パーにして胸に当てたりもしながらです。これが意外と難しい…その場でちょっとピアノで弾いて!と言われたものの、旋律をうろ覚えだったために、動画を見つけて流すことに。すると、動画のテンポが速く、文字を替えて歌うには、普通の歌詞につられてしまって…難しい!これは、生伴奏にしたほうがテンポもみなさんの歌に合わせて自由に変えられたのにと、悔やまれるところでしたが、なによりKさんが、やってみてもいい?と申し出てくださったことが、有り難いことでした!

コンサートが始まると、普段は一緒に活動することのない、ふたつの町内会同士、なんとなく少し緊張感がありましたが、音楽に次第にほぐされて、少しずつ一体感も出てきたように思いました。場の空気を和ませること、その場にいるみなさんの意識を、同じ方向にすっと揃えていくこと、谷地畝さんのあたたかな歌声が、そんな役目を果たしてくれたような気がします。

ここでも、出た出た月が~♪という「月」の短い歌を使って、丹田を意識した呼吸の練習をしてみました。80,90代も多くいらっしゃったこの日、丹田、という言い方はこの世代にはとても伝わりやすかったようで、みなさん、すぐに、気持ちよさそうに深呼吸を…。伝わりやすい、と言うのは、わからない、ついていけない、人を作らない=どんな人も阻害しないことでもあり、そんな小さな積み重ねも、場の空気を替えるなと感じました。

ラジオ体操第一は、視察いただいたみなさまにもご一緒に参加いただきました。これは、しっかりやると、結構疲れます!でも、ついつい、あの前奏が始まるとみなさんもぞもぞと、いい姿勢で立ち上がってくださるところが、面白くもあります。日本人であれば、世代を問わず、知らない人はいないかもしれない、有名曲・体操であることに今回改めて気が付きました。

谷地畝さんから最後に「今日、みなさんと楽しい時間をご一緒できたこと、また、みなさんに、少しでも幸せな気持ちでお帰りいただけたら、と願いを込めまして…」アンコールは「夕焼け小焼け」。なんとも、あたたかい、歌声、歌でした。歌に温度があるわけではありませんので、谷地畝さんの歌声が、あたたかいのでしょうか。

前回もいらしてくださったおばあちゃん、アンケートをお渡しすると、文字を読むのにメガネを掛け替えなければいけなかったり、ペンシルを持つにも手が震えてしまって、よく字がもう書けないの、と。隣に座り、質問を口頭で伝え、答えてくださったことを、私が隣りで書くようにしました。もちろん、ここに限ったことではありませんが、実は今日はそういうおばあちゃんが、お一人ではなく、こんなときスタッフがもうひとり二人、一緒であればと悔やまれました。お二人分はどうにかお聞きすることができましたが、本当はもっとじっくり、好きな歌や、若い頃に聞いた歌をお聞きしてみたかったところです。きっとすてきなエピソードも、隠れていたかもしれません。歌が呼び起こす懐かしい記憶、うれしい記憶は、いくつになっても忘れないよう、どんな人も大切に心に持っているものなのかもしれないと思いました。そして、また今日お会いしたみなさんに、次回もどうぞお元気でお会いできますようにと、また2つの地区の交流がほんの少しでも、進みますようにと願いながら会場を後にしました。〈この公演は、岩手県「令和4年度被災者の参画による心の復興事業」補助金を受けて実施しました〉