お知らせ

菖蒲田浜「春待ちコンサート」

2023.2.6

立春を過ぎ、寒さの中にも春の気配が感じられるようになりました。雲間から差す日差しに束の間ほっとします。今朝は宮城県七ヶ浜町の菖蒲田浜地区避難所にうかがいました。出演はBouquet of Music(ヴァイオリン叶千春さん、ピアノ菅野明子さん)です。お二人には今年度、七ヶ浜町内5か所での復興コンサートをご依頼しており、今日は松ケ浜、花渕浜、代ヶ崎浜に続く4か所目となります。

コロナ禍以前は毎年1度は訪れていたこの菖蒲田浜ですが、感染症流行の影響でコンサートの延期や中止が相次ぎ、2年以上のブランクを経て、やっと今日の開催を迎えることができました。毎月行なわれていた社会福祉協議会主催の地区サロンもここしばらくは取りやめとなっていたそうで、「本当に久しぶりですよ」と担当者が感慨深そうにしていました。ずっとサロンをお休みにしていたし、今日の来場者は少ないかも…という心配の声をよそに、用意した席はいっぱいになりました。
コンサートは葉加瀬太郎『情熱大陸』でエネルギッシュに幕を開け、続いては『ひまわり』が演奏されました。これは2011年のNHK朝の連続テレビ小説の主題歌ですが、千春さんは「ひまわりがまっすぐに伸びて大きな花を咲かせる姿に力をもらった気がしたものです」と語りました。
窓辺から日が差して、会場は柔らかな光に満ちる中、明子さんはショパンの『ノクターンop.9-2』を披露しました。目を閉じてうっとりと聴き入る方が多くいました。日常の喧騒を離れた、透明な、特別な時間が流れているように思われました。

お二人はピアノとヴァイオリンの仕組みについて解説したあと、お互いの楽器の“音域くらべ”を始めました。1台でオーケストラとも言われるピアノの音域にヴァイオリンはどこまで対抗できるか、挑みます。
低音域については火を見るより明らかな負け戦ながら、高音はなかなかに互角の様子。蚊の飛ぶような弦の音に客席から「がんばれ!」と声援が飛んできました。
音域の広さでは適わないけれど、ヴァイオリンには自由自在に持ち運べるという特長があります。続く『チャルダッシュ』で千春さんは客席を縦横無尽に進んで、文字通りお客さんの「目の前」で演奏し、熱演に喝采が湧きました。
さまざまな日本の唱歌や歌謡曲なども演奏され、お客さんはのんびりと体を揺らしたり、リズムを取ったりして、調べにゆったりと身をゆだねていました。時折、マスク越しに小さく歌声も聞こえてきて、楽しんでいる様子が伝わってきます。遠くに望む太平洋はきらきらと穏やかな表情で、今日はなんだかいい日になりそうです。

終演後に或る方が「今日は5か月ぶりのサロンだったけど、再開の最初がこのコンサートで本当に良かったです。今日来た人はラッキーだったと思うよ!」と上気した様子でお声がけくださいました。その晴れやかな笑顔にこちらも嬉しくなりました。インフルエンザも含めてまだまだ気が抜けない時期が続きますが、少しずつでもこうした生の音楽をともに楽しむ機会を持てたらいいですね。