お知らせ

七ヶ浜・松ヶ浜「春が来た♪コンサート」

2023.3.28

今年度も、七ヶ浜町で被災の大きかった地域の避難所(集会所)社を会場に、各地区が主体となって開催する「地区サロン」(*)へ、復興コンサートをお届けしてきました。(*正式名称は「災害公営住宅入居被災者見守り・相談ネットワーク構築事業 地区サロン」)今年度最後の会場は、松ケ浜地区避難所。昨年9/27に予定されていたものの、感染症拡大傾向にある、との判断で、この3月に延期となったものです。そして令和3年度の訪問として予定されていた、昨年1/26も、同じく中止となってしまったため、松ヶ浜への訪問は、随分久しぶりでした。出演は、“Bouquet of Music”のお二人、ヴァイオリン叶千春さん、ピアノ菅野明子さんです。

当日は春の気持ちのよい青空が広がりました。ヴァイオリンの叶千春さん曰く、「七ヶ浜には、今年5回来させていただきましたが、5回とも、晴れてお天気の良い日でした!先日、自分で企画したコンサートの時は、朝から寒くて、雪まで降ってきてしまったんですけどねぇ…」そんな話しに、お客さんからも笑いが起こります。「七ヶ浜はどの会場も、広い窓から青空が見えて、とても気持ちよく演奏させていただきました。きっとピアノの菅野さんが、晴らしてくれてるんだと思います」とても仲の良いお二人の人柄が伝わってくるようなやりとりに、少し緊張していた客席も、ほっとされたようでした。

コンサートは「情熱大陸」「ひまわり」と、葉加瀬太郎さんの曲が続いて始まりました。「ひまわり」は叶さんにとって、思い入れのある曲だそうで…「ちょうど、震災の頃に放映されていた、朝ドラのテーマ曲が、この曲でした。こういう仕事をしていて、あの時に、どう、向き合うかをいつも(弾く度に)考えさせられる、大切な曲です。」叶さんは、音楽の力による復興センターが、復興コンサートを始めた当初から、今でも演奏活動に協力いただき、長く関わってくださっている貴重な存在でもあります。それぞれの時期に、演奏しながら、また訪ねる道中で、自問自答を繰り返していらした葛藤に、今度は私達が思いを馳せる番でもありました。

続いて、菅野さんによるピアノ独奏です。実は今朝会場に着くまでは、持参いただいたキーボードを演奏していただく予定でした。松ケ浜地区避難所には、地域の方から寄贈されたアップライトピアノがある、とわかってはいたものの、会場入りが朝早く、調律の時間も取れず、何年も弾かれていないピアノを使うことは、賭けに近いことで、流石に今回は諦めたのでした。が、菅野さんが到着されて、念のため…と弾いてみると…「あれ?調律、意外と大丈夫かも…?」そしてやはり、キーボードとピアノでは「音の拡がり方が全然違う!」「ピアノの方が、やっぱりいいですね」「せっかくあるから…使わせていただきましょうか…」そんな話から、あれよあれよと、ピアノをお借りすることに。ピアノの位置も社協のみなさんにお手伝いいただき4人がかりで動かして、今日はピアノで演奏することになったのでした。そんなエピソードも交えつつ、「ピアノは一台で、オーケストラの楽器全ての音域をカバーできるんです。えっへん!と、いつも自慢しています」菅野さんのお話しにも、またどっと笑いが起こりました。演奏されたのは、ショパン「ノクターン」op.9-2。誰もが一度は耳にしたことのある1曲です。電気信号として、スピーカーの一点から音の聴こえるキーボードとは異なり、ピアノは楽器全体から、音が円を描くように空間に広がります。また、お借りしたピアノは、菅野さんが確認したところ、昭和50年納品と書かれていたそう。約50年前に作られたピアノとは思えないほど、まろやかで、豊かな響きのするピアノです。「せっかくの楽器ですので、ぜひ、みなさんでもっと弾いていただけたら、とピアノも喜んでくれるのでは、と思います」と菅野さんも、最後に付け加えてくださいました。

再び、ヴァイオリンとピアノでの演奏です。モンティ「チャールダッシュ」では「ピアノにはできないけれど、ヴァイオリンにはできること」という訳で「ちょっと私、出張してきますね」と叶さん。舞台を下りて、お客様の間を歩きながら、演奏してくださいました。こんなにヴァイオリンの演奏を、文字通り目の前で聴くことは、なかなかないかもしれませんね。続く「日本の四季めぐり」はクイズにもなっています。「四季の歌が、いくつも出てくるメドレーなのですが、さて、何曲出てくるでしょうか?これが問題です」と叶さん。どこか懐かしく感じる曲が、次から次に登場します。演奏が終わると…拍手はまばらで、みなさん、数えるのに一生懸命だったご様子…「そうですよね、そうなりますよね」と叶さん笑。答え合わせは、三択です。9,10,11曲、さて、このうちどれでしょう?…正解発表の前に、みんなで1曲ずつ答え合わせです。「お正月」「春よこい」「鯉のぼり」「我は海の子」「かたつむり」「待ちぼうけ」「どんぐりころころ」「雪」「たきび」「棒が一本あったとさ」「故郷」…と、ひっかけ問題のように同時に出てくるものも含めて、なんと11曲が詰め込まれていました。最前列で見事正解された方は、サックスを演奏される方だったそうで…お見事!でした!

コンサートもいよいよ終盤。「春がきた」を皆さんにも、歌で参加していただきました。ひと頃よりも感染状況も随分と落ち着き、こうして集まること、みんなで歌うことも、換気やマスクなど対策をしながらであれば、以前ほど、忌避されることはなくなってきたように思います。今日は男性の参加も多く、ほがらかな歌声が会場に広がりました。歌い終わって「やっぱり(歌って)いいですね、あたたかい気持ちになりますね。3年経ってやっと歌えるようにもなった、と言う意味でも、今日は『春がきたコンサート』と言えるのかなと思いました」と叶さんがお話しくださると、あちらこちらで、笑顔で頷いてくださる方の姿がみえました。

村松崇継さんの「いのちのうた」、さとう宗幸さんの「青葉城恋唄」と進みます。「いつも、コンサートが決まると、どんな曲を演奏しようかな、とふたりで考えるんですが、決めていることは「自分たちの好きな曲を演奏しよう!」ということ。やはりその方が気持ちも入りますし、こんな素敵な曲があるんですよ、とみなさんに知っていただきたいですし…今日はいつにも増して、好きな曲ばかりを並べましたね」「ほんとですね」そんなお二人の、コンサートの裏側が見えるようなエピソードも、みなさん興味深そうに聞いてくださいました。そして最後の曲が終わると、すかさず「アンコール!」のお声が。「ありがとうございます。やっぱり、アンコール、て言われると、嬉しいんです(笑)」そんな叶さんのひと言にも、またみなさん、どっと笑いが起こりました。そのアンコールは、「紅白歌合戦を見ていて、七ヶ浜のアンコールはこれだ!」と思った、という加山雄三さんの「海 その愛」。叶さんのお父様が好きだという加山雄三さん。震災で大変な思いをされた方も、もちろん数多くいらっしゃったかと思いますが、海に囲まれた七ヶ浜は、その恩恵も、やはり長い長い間受け取ってきた町でもあります。みなさん、耳を澄まして、聴いてくださっているのがわかるような、最後のアンコール。そして盛大な拍手を頂戴しました。

帰りは、マスクをつけて、お客様のお見送りも再開しました。「もう~なんだか元気もらった!」と手を合わせながら嬉しそうにおっしゃる方に「私もみなさんに元気もらいました~!」と応える菅野さん。地区の役員さんとは、「長く役員してくれてた方がね、子どもさんがなのでは使っていたピアノ、もう捨てようと思ったけど、もったいなくて、とここに寄贈してくれたんです。今日、弾いてもらったこと、伝えておきますね」「あら!それなら『と~ってもいい子でしたよ!』とお伝えください!」そんな会話もありました。近所の集会所での、小さなコンサートではありましたが、今日はなんだかお洒落をして来てくださった方が多かったことも、とても嬉しいことでした。いつまでも元気にいる秘訣を、来てくださったみなさんのお姿から教えていただいたような気がします。またの機会、お会いできますように…七ヶ浜町社会福祉協議会のみなさんも、今年度も大変お世話になりました![この公演は、宮城県令和4年度NPO等による心の復興支援事業補助金を受けて実施しました。]