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渡波「夏の音楽会 音楽の花束をあなたに…」

2023.7.26

予想気温35℃、雲一つない快晴の下、石巻市渡波にあるデイサービス・ミニデイサービスのさりに「Bouquet of Music」ヴァイオリンの叶千春さん、ピアノの菅野明子さんと伺いました。会場につくと、たくさんの七夕飾りと「熱烈歓迎!」の文字が。何日も前から、みなさんで準備してくださったそうで、本当にうれしく思いました!

渡波は、住宅が立ち並ぶ中にいるとわかりませんが、上空からの写真を見ると、実は、海のすぐそばにいることがわかります。東日本大震災の際には、のさりの辺りも1~2m近く津波の浸水を受けました。震災後は、渡波を離れた方も多くいらっしゃいましたが、その方々の中には「ここに来ると、友達に会えるから」と、遠くからデイサービスのさりに通ってくる方もいらっしゃるそうです。また、ご近所のみなさんも、自宅を改修されたり、再建されたり、災害公営住宅に移られた方も。地域全体で甚大な被害を受けた地域と言えます。そんな渡波に、ボランティアに通われたことがきっかけで、共生型のデイサービスを始められたのさりさん。今日も、高齢者だけでなく、支援学校に通う夏休み中の利用者さんも、参加されました。ご家族や地域の方も参加いただき、総勢40名を超す参加者となりました。

コンサートの1曲目は「七夕さま」。少しおしゃれなアレンジでしたが、音楽に誘われて口ずさむ声があちらこちらから聴こえてきました。ヴァイオリンの千春さんが、ご挨拶に続いて「こちらの、大きな『ありがとう』とすてきなメッセージはどなたが…?」とお聞きすると、ハイ!と手が挙がりました。「I LOVE YOU!」とも書いていただいて、ピアノの菅野さんも「うれしいです~」と照れ笑いです。「続いてお送りするのは、今日のチラシに大きなひまわりが描かれていたので…」と葉加瀬太郎さん作曲の「ひまわり」を。ちょうど震災の頃に放映されていた朝ドラのテーマ曲で、千春さんにとっては忘れられない一曲。元気がでるような夏らしい曲調に、会場の後ろの方からは、マラカスの音が。それに気づいた千春さんも「演奏に参加してくださるの、とっても嬉しいです~」とすかさずお話しくださいました。その一言に、少し心配そうにされていたスタッフさんも、ほっとされた様子。見守っていたほかの皆さんも、口ずさんだり、手拍子をされたり、自由に楽しんでいいんだな、ということが分かって、同じくほっとされたかもしれません。ご参加、大歓迎です!

楽器紹介を兼ねたピアノ独奏ではショパン「小犬のワルツ」を。菅野さんが、譜面台を取って演奏してくださったので、指が速く、回り続ける様子が見えて、みなさん、びっくりされていらっしゃいました。続く楽器紹介に、ヴァイオリンの千春さんからは、楽器や弓に使われている材料のお話しを。また「ヴァイオリンとピアノどちらの楽器の音域が広いか??」を比べてみました。「ピアノはやはり楽器の王様、なのです…が、ひとつだけ、ヴァイオリンが勝てることがあります。それは移動しながら演奏できることです!」と、続く「チャルダッシュ」では、お客様の間を歩きながら演奏しました。先ほど、マラカスを振っていた方のすぐ隣りでも演奏されて、びっくりされたご様子!目の前で聴く迫力に、みなさんが驚かれていました。

コンサートもいよいよ後半です。次は、大きな大きな「パパ、お月さまとって」という絵本を読みながら、それぞれの絵に合わせて、クラシックの名曲をお届けする、Bouquet of Musicオリジナルのプログラムです。エリック・カールによる絵が美しいだけでなく、横に広がったり、上に下にとページが伸びたり、あちこちに仕掛けがあるのも楽しい絵本でした。また、ドビュッシーの「月の光」をはじめ、耳なじみのあるクラシックがいくつも登場するのも、とても自然にマッチしていて、みなさんもとても集中して見入ってくださっていました。

童謡・唱歌や絵描き歌がたくさん出てくる「日本の四季めぐり」では、何曲含まれていたでしょう?というクイズも。「棒が一本あったとさ~♪」の絵描き歌を、すっかり歌えた菅野さんに、拍手喝さいでした。コンサートの最後は、日本のたくさんあるいい歌からなにか一曲、と土井晩翠作詞・瀧廉太郎作曲の「荒城の月」を。こちらも、口ずさまれる声があちこちから聴こえてきました。

コンサートはこれで終演です、が、今日はアンコールを兼ねたお楽しみコーナーとして「相馬盆唄」、盆踊りをみんなで踊ることに!もちろん、ヴァイオリンとピアノの生伴奏付き、そして法被まで借りてくださっての本格派です。急遽、椅子を片付けて、丸い踊りの輪ができました。「ハ!ヨ~イ~ ヨ~イ~ ヨ~イトナ!」菅野さんの掛け声で、法被に着替えたみなさんが、列になって踊り出します。立ち歩くのが大変な方も、椅子に座ったままで参加してくださいました。なんでも、今日も参加されている3名の方が先生となって、これまで何回か、みなさんで練習してくださったのだそうです。優雅な手の使い方、ピンと伸びた姿勢、みなさんとっても素敵です。若い方たちも、見様見真似ですぐに一緒に踊れるのが、盆踊りのよいところ。そして、みんなで踊ると、楽しいですね。ひと足早い夏祭りの雰囲気に、大盛り上がりとなりました。…と、千春さん、菅野さんからご提案が…「最後の最後に、もしよろしかったらもう一曲…」すかさずみなさんからも、「アンコール!アンコール!」の声が。「きっとみなさん、ご存じの曲かと…」と菅野さんが弾き始めた前奏は「青葉城恋唄」でした。盆踊りで、あまりにも盛り上がりましたので、少し、この曲を聴きながら気持ちも落ち着いていくようです…。千春さんの、スムーズな進行に、あっという間に感じた1時間のコンサート。最後、スタッフさんの手作り帯バッグに入ったプレゼントを、演奏者だけでなく、復興センタースタッフにもいただきました。最後まで、みなさんにお心遣いをいただき、一同感激の一日。本当にありがとうございました。

 

その後、片付けをしているときにも、「今日はとっても楽しかったよ、ヴァイオリンを生で聴くのなんて、初めてのことでした!みんなで踊ったのも、楽しかったねぇ」「今日は、来てよかったです!感動しました!」と、声をかけてくださる方が何人も。言葉でのコミュニケーションが難しい方の様子も「今日のあのシャカシャカは、最高に楽しい!という彼女の意志表示だったんですよ」と教えていただきました。Bouquet of Musicのお二人が出発する時には、食事の手を止めてお見送りに出てくださった方も。「また来てね!」「きっとだよ!」そんな一言一言が、あったかく心に響きました。何日も前から、たくさんの準備をして迎えてくださったスタッフのみなさんにも、また「ヴァイオリンとピアノで盆踊り」という前代未聞な挑戦に、寄り添い挑んでくださったBouquet of Musicのお二人にも、本当にありがとうございました!また、お会いできますように!〈この公演は「令和5年度宮城県NPO等による心の復興支援事業補助金」を受け、『音楽と交流によるコミュニティ形成支援事業』の一環として実施しました〉