お知らせ

メモリアルコンサート vol.41

2023.10.11

音楽の力による復興センター・東北では
東日本大震災の月命日にあたる11日に、市民のみなさんとともに
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考え、
「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
(主催=仙台市/協力=せんだい3.11メモリアル交流館)

今朝の雨から一転、秋晴れの日となりました。本日の出演は、ソプラノ松本康子さん(仙台オペラ協会)とピアノ千葉順子さんです。
松本さんは2014年から毎月一回、仙台市宮城野区の復興公営住宅に「うたカフェ」という歌の会を届けてくださっていて、先月、通算100回を迎えたところです。いつもほのぼのとやさしい雰囲気の松本さんですが、今日はゴールドのドレスに身を包み、気品あふれる様子で登場しました。

村松崇継『彼方の光』で始まり、ブラームス『五月の夜』ほか、ヘンデル『かつて木陰は』、小林秀雄『日記帳』などが披露されました。情感豊かにほとばしる声は聴く人を圧倒します。千葉さんのピアノはきりりと小気味よく、歌声をしっかり支えます。お二人の息の合った演奏が1曲ごとにドラマを生み出しています。
松本さんは、震災の後に世界各地から東北へ支援の手が差し伸べられたことを語り、小林康浩『小さな町から』を紹介しました。作曲者の小林さんは仙台で合唱団活動に尽力され、数年前に急逝された方です。松本さんはその合唱団でヴォイストレーナーを務めていて、格別の思いが詰まったこの歌を涙を浮かべて歌いました。観客の中には合唱をやる方がいらしたようで、「小林さんの歌が聴けて嬉しい」「まさかここで聴けるなんて」という声がありました。

オペラの公演で主要な役をこなす松本さんは、「日本ではあまり上演されることのない作品ですが…」と前置きし、チレア作曲の『アドリアーナ・ルクヴルール』について言及しました。その中で、主人公が歌うアリア『わたしは貧しい神のしもべ』をプログラムの最後に披露しました。主人公の謙虚な姿勢をソプラノ歌手たるご自分に重ね、天から与えられた才能がもしあるとするならば、それを人々にお届けしていこうという気概を示しました。
アンコールのマスカーニ『アヴェ・マリア』は、かつて松本さんが主役を演じたオペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』の間奏曲です。どこまでも続くかと思われる最後の音が消えた後、拍手が鳴りやまずみなさんうっとりとした様子で名残を惜しむようにしていました。

終演後、お客さんに書いていただいたメッセージカードには
「3.11で主人を亡くし、コンサートで涙を流して主人を偲んでいます。非日常の時間をありがとうございました」
「世界の各地で戦火が激しくなって心痛む日々、今日は湧きあがる美しい歌の海に心遊ばせていただきました」
など、たくさんの感謝の言葉が書いてありました。
松本さん、千葉さん、ご来場のみなさん、どうもありがとうございました。