お知らせ
メモリアルコンサート vol.43
- 2024.1.12
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音楽の力による復興センター・東北では
東日本大震災の月命日にあたる11日に、市民のみなさんとともに
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考え、
「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
(主催=仙台市/協力=せんだい3.11メモリアル交流館)空気がぴりりと冷えた朝です。今日のメモリアルコンサートに出演するのは岩手県在住のアルト谷地畝晶子さんとピアノ阿部夕季恵さん。
お二人にはここ数年にわたり、岩手県沿岸部の釜石市や大槌町に歌とピアノの演奏を届けていただいています。
さて、オープニング曲は季節にふさわしく『ペチカ』でした。響き豊かな声とやさしいピアノの音色が会場をふわりと暖めるかのようでした。
続いてはがらりと雰囲気を換えて、朝のドラマでおなじみの『東京ブギウギ』をお二人が連弾しました。
連弾はあまり見る機会がないので、なにかパワフルな、目覚ましい感じがしました。呼吸がぴったりの、軽快かつダイナミックな演奏にお客さんは身を揺らしていました。
『故郷』をピアノ独奏するときに、夕季恵さんは楽譜をみなさんに見せました。なんと編曲家の手書きだそうで、一見読みづらい譜面だけれども、その筆の勢いには編曲家の想いが描かれているのだなと納得させられるものがありました。四季折々、様々な風景が思い起こされるような演奏でした。谷地畝さんは東日本大震災のときに、大船渡市に単身赴任中だったお父さんとしばらく連絡が取れなかったという体験談を語りました。数日後にやっと連絡が取れ、無事を確かめ合う中で、お父さんは「今は音楽どころじゃないけれど、いつかきっと音楽が必要になる時が来るから、がんばれ」と言ったそうです。谷地畝さんはその言葉を今も胸に刻んで音楽活動をしているとのお話しでした。
その思い出に重ねて演奏されたのは、高野喜久雄作詞『くちなし』でした。この歌は、生前の父が植えたくちなしを見て、息子が父の思い出を語るという内容です。お客さんもきっとご自分の家族のことを思い出していたことでしょう。ちょっと涙ぐむ姿もありました。夕季恵さんは「釜石の子供に喜んでもらった曲です」とショパン『幻想即興曲 嬰ハ短調Op.66』を披露しました。鍵盤上を駆け巡る指さばきや、会場に満ちる力強い響きにお客さんは圧倒されていました。ショパンが抱えていた苦悩や悲しみが吠えているようです。人々が抱えるそんな感情を受け止め、表現に昇華し、浄化させる芸術家という存在に改めて敬意を表したいと思いました。
最後はみなさん一緒に『いつでも夢を』を歌いました。お客さんからは「今年の歌い初めです」「一緒に歌えるなんて!」との声があり、楽しんでいただけた様子でした。今日初めて参加した或る方は「能登の地震のこともあり胸がざわざわしながら過ごす中で、このような機会に出会い、歌や演奏が人をいやしたり力を与えたりすることを、頭で理解するのではなく、自分の体感として知ることができました」というメッセージをくださいました。