お知らせ

メモリアルコンサート vol.44

2024.6.11

音楽の力による復興センター・東北では
東日本大震災の月命日にあたる11日に、市民のみなさんとともに
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考え、
「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
(主催=仙台市/協力=せんだい3.11メモリアル交流館)

まだ6月ですが、夏休みを思わせるような青空が広がっています。今年度最初のメモリアルコンサート、出演はピアノ原田満梨奈さんです。
原田さんは今年の3月11日に震災遺構の旧荒浜小学校を訪れ、その帰り路にこのメモリアル交流館に立ち寄ったそうです。ふと見ればピアノが置いてあったので、「弾いてみたいな…」と思ったけれども「今日は静かにお祈りする日だから」と遠慮してそのまま帰宅しました。「いつかあのピアノを弾いてみたい」との思いを胸に秘めて――そして、その数日後にメモリアルコンサートへの出演依頼があり、ご本人はものすごく驚いたそうです。きっとご縁があったんですね。
さあ、オープニングは成田為三『浜辺の歌』でした。慣れ親しんだ歌ですが、凝ったアレンジによっていつもとちがう新鮮な風景をみせてくれます。初夏の爽やかな風が吹き抜けたように感じました。
続いて、服部良一『ラッパと娘』、ジョビン『イパネマの娘』と「娘つながり」で曲は続きます。昭和歌謡の溌剌とした元気いっぱいのスウィング感、そしてボサノヴァがともなう夏の午後の甘いけだるさが会場を包みました。

現代音楽を愛する原田さんは、ここでオーストラリアの現代作曲家、カール・ヴァインの『アンネ・ランダ・プレリュード』を演奏しました。オーストラリアのピアノ教育に尽力した音楽家アンネ・ランダ氏の功績を讃えるために作られた組曲だそうです。今日は「フィリグラン」「フゲッタ」「コラール」の3曲が演奏されました。
文字通り、鍵盤の端から端までを使ってダイナミックに弾く様子は、まるでダンサーのよう。最後の一音の余韻が消え入るまで、観客は息を呑んでしんと音のゆくえを確かめていました。
お客さんからは「今まで聞いたことがない音楽でびっくりしました!力強くて激しくて、良かったです」「いろいろと思い出す風景が見えて泣きそうになりました。深沼の海岸を思い出しました」という感想がありました。
最後に『見上げてごらん夜の星を』をみんなで一緒に歌いました。原田さんの歌声にさそわれて、みなさんの声も伸び伸びと夏の空に広がっていくようでした。「一緒に歌えて楽しかったです」「心が洗われるようでした」と、にこやかに終宴となりました。
中には岐阜からの旅行者がいらして、「11日に震災遺構を訪ねようと思い、バスを待っているとき偶然にこのコンサートに出逢いました。感激しました」と語っていました。
終演後、観客を見送る原田さんに、涙を拭きつつ話し掛けている人、晴れやかな笑顔で話し掛ける人もいました。みなさん、どうもありがとうございました。