お知らせ

みやぎの「花は咲く」コンサート開催しました

2014.4.23

宮城野区被災者交流支援事業 ≪仙台フィルとうたう「花は咲く」合唱団プロジェクト≫
(主催:音楽の力による復興センター・東北、仙台市/助成:ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞)
おおむね60歳以上の津波で被災した方々と毎月1回、仙台市宮城野区内3か所の会場で合唱の練習を重ね、
本日、宮城野区文化センターのステージで仙台フィルと共演しました。

いかにも春らしく、明るく晴れた穏やかな日となりました。今日は≪みやぎの「花は咲く」コンサート≫の日です。昨年の秋以来、練習をつづけてきた「花は咲く」合唱団の成果をお見せするハレの舞台です。
DSC01043合唱団のみなさんはいつもより華やかな装いで集合しました。女性はお化粧も明るく、男声はぱりっとスーツを着て登場です。大舞台への気合いが感じられますね。
 リハーサルはいつものように講師の齋藤翠さんと伴奏の可沼美沙さんにご指導いただきました。口の開け方や発声など、これまで何回も練習してきた基本のことをおさらいしつつ、何度か歌いました。
その後、仙台フィルメンバーが合流し、合唱団は初めて弦楽アンサンブルの演奏と合わせました。すると、これまで練習してきたピアノの音とは違う、滑らかで円やかな弦の響きにどうついて行っていいのかわからないとの意見が出ました。DSC01044
ヴァイオリニストの小川有紀子さんから「チェロやコントラバスの低音の弦の音をよく聞いてください」とアドヴァイスがありました。
また、こんなに間近で弦楽器を見るのが初めての方も多く、歌っている最中も視線が釘付けになっている姿がありました。リハーサルの様子を客席で見ていたピアノ伴奏者の可沼美沙さんから「視線はお客さんに向けた方がいいと思います」との指摘もありました。

行列一方、会場の外には開場時刻のだいぶ前から列ができ始めました。このコンサートを楽しみに待っていたというお客さんの熱意が漂っています。入場無料ですが事前のはがき申し込みが必要で、今回は定員数を大きく上回る申し込みがあり、抽選の結果、あいにくと100名近い方が落選となりました。ご期待に沿えず申し訳ないことです。

いよいよ15時、開演となりました。
合唱団は客席の最前列に座って、まずは仙台フィル弦楽アンサンブルの演奏をお客さんと一緒に楽しみました。IMG_7467-
ドヴォルザーク「弦楽のためのセレナーデ」、バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」に続いて、
合唱指導にあたってきた齋藤翠さんが今日は本職のソプラノ歌手としてヘンデル「私を泣かせてください」を歌いました。「あれ、先生なの?」とドレス姿の翠さんに目を丸くしている合唱団メンバーもいました。
IMG_7505-その後、モーツァルト「アヴェ・ヴェルム・コルプス」、シュトラウス「ピチカート・ポルカ」、マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」と弦楽の魅力をたっぷりと披露しました。曲と楽器の紹介に加え、メンバーの自己紹介もありました。それぞれのトークが個性的で、IMG_7509-仙台フィル楽団員の意外な一面に客席は笑いに包まれる場面もありました。

そうして、プログラム最後の曲「花は咲く」の番になりました。
IMG_7564-舞台上には総勢53名の合唱団メンバーが並んでいます。胸には色とりどりの手造りコサージュが咲いています。
ここにいる人は応急仮設にお住まいの人、みなし仮設にお住まいの人、災害公営住宅に移転した人、津波被災地区の自宅に戻った人、そして彼らのお世話役でもある宮城野区職員など、みなそれぞれにさまざまな状況を抱えていますが、この曲を歌うという一つの目的のために一緒にこの半年をがんばってきました。
IMG_7560-ずっと支援されるだけだった人が、誰かのために歌い、自分から発信するという新たな一歩を踏み出したのです。 
はじめての大観衆を前に、だいぶ緊張しているのでしょう、いつもより硬い表情をしています。やがて前奏が始まり、歌が始まりました。歌声は会場に満ち、観客を温かく包みました。客席には涙を拭っている人の姿がたくさんありました。見逃すまいとじっと見つめる人、一緒に口ずさむ人もいます。
歌いながらいろいろなことが胸中に去来したのでしょう、IMG_7559-泣いているメンバーや演奏者もいました。
合唱団のみなさんは立派に歌い上げ、とても堂々として見えました。今度は観客からの万雷の拍手が合唱団と演奏者を包み込みました。
IMG_7538-
アンコール曲の「朧月夜」では客席も舞台も一体となり、明るい歌声が響き合いました。

DSC01063終演後、サントリー芸術財団音楽事業部長の佐々木亮さんから「第2回ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」の賞状授与が行なわれ、当センター代表理事の大澤隆夫が代表して受け取りました。

 
「これまでのことが思い出されて、前奏からずっと涙が止まらなかった」
「一生の思い出になる特別な日です」
「なんだかお祭りみたいだったねえ」
「たのしくて、いそがしくて、あっというまに終わっちゃった」

ある人は固い握手を交わし合い、抱擁を交わし、ある人は泣き、笑い、と合唱団のみなさんはさまざまな表し方で今日のことをかみしめていました。
これから災害公営住宅に入居する人、その抽選に外れた人、自宅再建のめどがついた人、つかない人、など彼らの行く先はさまざまです。これからの人生もいろいろあるでしょうけれど、彼らのそばに今日の歌がお守りみたいに寄り添ってくれたらいいな、と心から願います。
みなさん、本当におつかれさまでした!どうもありがとうございました。