お知らせ

七郷ぽっかぽかサロンへ

2014.5.9

仙台市東部にある若林区七郷地区。沿岸部にもほど近く、荒浜地区をはじめとする津波被害地域から移転してきた人が民間借上げ住宅に多く住んでいます。被災で移転してきた方と地域の高齢者との交流を図るために、地域のボランティアサークル「ぽっかぽか」が中心となって毎月一回開催する「ぽっかぽかサロン」は今日で第20回を迎えたそうです。参加者から「これが楽しみでね」「毎回欠かさず来てるよ」という声が聞こえました。
IMG_8363-今日の復興コンサートの出演者は仙台チェンバーアンサンブルのフルート渡邉珠希さん、ピアノ門脇麻美さん、ソプラノ勝又久美子さんによるトリオです。会場にはおよそ40名の方が集まりました。
オープニングは「翼をください」でした。曲が終わった途端、客席で「感動で身震いする思いです」と言う方があり、演奏者もうれしそうでした。
続いて、「朧月夜」「宵待草」「荒城の月」など日本の叙情歌が披露されると、多くの方が穏やかな表情で一緒に口ずさんでいました。ショパン「ノクターン」やハチャトゥリアン「ワルツ」では「スケートの真央ちゃんの曲だ」との声が。とても気さくに反応してくださるので、演奏者のトークも弾みます。
IMG_8470-復興コンサートでよく演奏される「故郷」ですが、今日は手話の振りをつけてみんな一緒に歌うことになりました。勝又さんのリードでみなさん積極的に手話を覚えました。IMG_8485-

後半は「虹の彼方に」「ムーンリバー」など懐かしの映画音楽が披露されました。身を乗り出して聴く方や目を閉じてしみじみと聴いている方があります。青春時代の銀幕のスターを思い出していたのかもしれませんね。フィナーレの「踊りあかそう」が終わると大きな拍手が沸き上がりました。IMG_8531-

コンサートのあとはお茶のみ会です。主催者のサークルぽっかぽかの方が毎回手作りのお菓子や漬物を用意なさるそうで、今日は柏餅、蒸しケーキ、きゅうりの漬物、セロリと蕪の浅漬け、茎わかめの和え物などがテーブルに並びました。演奏者もみなさんの輪に加わって、お茶とお菓子とおしゃべりをたっぷり楽しみました。

津波で壊滅した荒浜地区出身の方にお話しをうかがいました。
「うちに一人でいてもよくないし、みんなとこうして会えると発散になるから、毎回来るの」
「危険区域だから家は建てられないけど、まずご先祖さんのお墓を直したんだ。子どもや孫に伝えられるようにってね」
「津波でみんな持って行かれた。今でもふとしたときに《あ、あれはどこにしまったっけ。あったはずだ》って思って《ああ、津波でみな流されたんだった》って気がつく。なんか変な感じだね」
「チリ地震津波もたいしたことなかったからさ、まさか津波が来るなんて思ってなかったもの」
「先祖からもらったものとか、賞状とか、思い出のものはなんぼお金あっても買えないんだよね」
「老後に自分史を書くつもりで何十年もつけてた日記も流された。くやしいねえ」
「荒浜は、みんなの心の中にだけあるの」

その口調には、慣れ親しんだ土地への強い愛情と誇りが感じられました。
震災から3年が経ち、仙台でも中心部では震災の痕がほとんど見えなくなっています。しかし、たった数キロメートル離れたところには、まだまだ現在進行形として傷が疼いていることを感じました。