お知らせ

気仙沼その2_O様宅「小さな小さな音楽会」

2014.6.23

気仙沼小学校の北側の津波浸水地域から少し坂を上ったところにある沢田地区。坂をどちらに下りても大変な被害のあった場所です。今回は、個人のお宅を会場にお借りし、リビングルームに地区の方が集まってのコンサートとなりました。出演は、お昼に引き続き、仙台フィルからオーボエ西沢澄博さん、チェロ山本純さん、そしてピアニストの阿部玲子さんです。
仙台フィルのみなさんは、気仙沼市民会館からの帰り道に必ず通る道だそうで「ここ、通ったことありますね」と西沢さんと山本さん。準備をしているとお客さんがぽつりぽつりと集まってきました。
IMG_1530-今日は窓を背景に、夕暮れの空のうつろいを眺めながらのコンサートとなりました。西沢さんが選曲したシューマンの「夕べの歌」がとても似合いました。
ここでもお客さんと目と鼻の先の距離だったこともあって、それぞれの楽器紹介は盛りだくさんな内容になりました。山本純さんは、チェロはひとつの楽器・弓の中に、部位によって使われている木や素材が本当に様々であること、またバスからソプラノまでの、人の声の音域とチェロの音域は重なっているため、“人の声に一番近い楽器”と言われていることなどを話しました。
また西沢さんからは、フルートは息が“足りなくなって”苦しいけれども、オーボエは“息が余って”苦しいという謎の解説や循環呼吸の実演コーナーもあり、西沢さんの妙技(?)にみなさんびっくりされていました。IMG_1580-
事前にリクエストをいただいていた曲は、この家に住むおばあちゃんが、戦時中こっそり蓄音機で聴かせてもらったというブラームスの「子守歌」でした。みなさんも一度はどこかしらで聴いたことのある曲。おばあちゃんもとっても懐かしそうに、にこにこと聴いていらっしゃいました。

IMG_3240-終演後、帰りがけのお客さまには「こんなに近くで聴かせてもらうことはないから、演奏している方の指先まで見えて、息遣いも聴こえて来て、本当に良かったわ~」と言われたり、このお宅のおばあちゃんからも「今日はとっても良かった。もうずっと、忘れられない!」と言っていただき、私たちも笑顔になりました。
コーディネートしていただいた村上さんいわく、「オーケストラの人たちが、コンサートで話すのは聞いたことないものね。お二人ともお話し上手いねぇ」と。山本さんは「以前から小さなコンサートではお話ししていたけれど、震災後とくに、こうしていろんなところで演奏させてもらいに行くようになって、僕らもそれから、ですよ」と言いました。
IMG_3310-確かに、復興コンサートは、小さな会場でも大きな会場でも、演奏の合間に演奏家が直接お客さまに話しかけます。演奏からもお話しからも、演奏家のお人柄がお客さまに伝わっているなと感じる場面が、これまでもたくさんありました。つくづく、演奏会というのは“出会いの場”なのだと思います。

今回、会場としてご自宅を使わせてくださったOさんご家族、本当にありがとうございました!