お知らせ
宮城県美術館 ゴッホの《ひまわり》展によせて
- 2014.7.29
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今日から3日間、宮城県美術館 講堂へ、仙台フィルヴィオラ奏者の長谷川基さんと、長谷川さんが講師を務める仙台ジュニアオーケストラの団員の今田理香子さん(仙台第一高等学校1年)、武澤智哉くん(宮城教育大付属中2年)、2011年度卒団生である須田聖さんの4名による、ヴィオラ四重奏のコンサートに出かけています。
この春、イタリア国立クレモナ弦楽器製作学校の校長が復興支援のひとつとして、現役の職人がかつて卒業作品として製作した楽器を、東北地方の若者によるオーケストラ団体に贈ってくださいました。そして仙台ジュニアオーケストラでは、ヴィオラ4本を頂戴しました。いただいた楽器の中には、今では名工と言われるほどの職人の手によるものも含まれていました。また、宮城県美術館では、この度東日本大震災復興支援事業として損保ジャパン東郷青児美術館蔵のゴッホの《ひまわり》が特別公開されることになり、これに合わせて、気仙沼・石巻地域の高校生280名あまりが招待されました。この高校生たちの歓迎セレモニーの中で、イタリアから送られたヴィオラの音色を、ぜひ聴いていただきたいと考え、演奏させていただくことになりました。演奏の前に私達も展覧会を見せていただきましたが、目の前で見る《ひまわり》はゴッホの息遣いが聞こえてきそうなほどに、荒々しいタッチが残っていて、つい昨日描き終えたばかりのようにも見えるほどの迫力がありました。真夏の差すような陽射しを、絵の中から思い出しました。
普段はオーケストラの一パートとして、舞台に立つ皆さん。こうして少ない人数でアンサンブルをすることは滅多にないのだそうです。またヴィオラだけでのアンサンブルなんて、あまり聴いたことがありません。楽譜もほとんどありませんが、今回は長谷川さんが編曲してくださいました。
それぞれが1曲ずつメロディーを担当し「アヴェ・ヴェルム・コルプス」や「ロンドンデリーの歌」などを演奏しました。ヴィオラだけでのアンサンブルは、とてもあたたかみがある観客席の高校生たちも、同年代のジュニアオーケストラメンバーに親近感を持ってくれたのか、とても真剣に聴いてくれた様子でした。
また演奏したみなさんにとっては、今回は自分がいつも使っている楽器ではない楽器での演奏となりました。いつもの楽器とは、やっぱり違うの?とジュニアオケOGである須田聖さんに尋ねてみると「全然違います!」とすぐに返事が返ってきました。「いつもだったら難しくて自分では弾けないようなところも、この楽器は良く響いてくれて、楽器が助けてくれるんです」とのこと。弦楽器の経験がないと、なかなか想像できないことなのですが、楽器が“助けてくれる”という言葉が目から鱗でした。
今回は、クレモナから贈られたこのヴィオラにとって、初めて被災地域で暮らす方たちにその音色を聴いていただく機会となりました。このコンサートの実現に大きなご協力をいただきました宮城県美術館の有川幾夫館長、教育普及部学芸員の松崎なつひさんに、心より御礼申し上げます。