仙台市の南にある名取市は太平洋に面し、津波で甚大な被害をうけた地域です。借上げ民間賃貸住宅（みなし仮設）にお住まいの方々を支える名取市サポートセンターどっと．なとりでは、名取市内と近郊に5つの常設サロンを構え、被災した方々の交流の場を運営しています。
今日はそのうちの一つ、仙台市太白区にある柳生サロンにうかがいました。こちらのサロンに集まる方々は、名取市沿岸部の閖上地区のほか、気仙沼、石巻、岩沼、亘理、山元、福島など出身地はさまざまなのだそうです。いつも和気あいあいとした雰囲気で、手芸や民謡などを楽しんでいるそうです。
今日のコンサートの出演者は声楽アンサンブルStella(ステラ)メンバーから3名、ソプラノ大宮香織さん、メゾソプラノ小野綾子さん、ピアノ千葉祥子さんです。あいにくの雨模様にもかかわらず、サロンの常連さんが次々といらっしゃいました。日頃からみんなで歌うのが好きとのことで、今日のコンサートをとても楽しみにしていたとのことです。

演奏はカッチーニ「アヴェ・マリア」でしっとりと始まりました。映画「サウンド・オヴ・ミュージック」からおなじみの「ドレミの歌」が続くと、手拍子する方や体を弾ませるようにしてリズムを取る方がいました。全身で音楽を楽しんでいますね。
さらに大宮さん独唱「ピエ・イエズ」、小野さん独唱「恋は野の鳥」を聞きながら「あらあ、うまいねえ」「あらあ、すごいねえ」と感動のあまり隣の人に思わず話しかけるおばあさんもいました。夏休みに親戚の家に行ったようなアットホームさがあふれているサロンですね。
日本の四季の歌メドレーでは（とくに「故郷」で）涙をこらえきれない方が多くありました。みなさん一緒に口ずさみながらそれぞれの故郷の情景が脳裏に去来したのでしょうね。その様子に演奏者の目も潤んでいました。
画家・星野富弘さんの詩になかにしあかねさんが曲をつけた「今日もひとつ」はステラの十八番です。観客のみなさんはその歌にこめられた思いをご自分の経験に重ねて、言葉のひとつひとつを噛みしめるように聴いていました。
アンコールでみんな一緒に「花は咲く」を歌うと、最後はみなさん笑顔になりました。
「素晴らしかった」「また来てね」「待ってます」
はい、また是非お会いしましょう。