お知らせ
どっと.なとり「和のコンサート」へ
- 2014.9.28
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明るく澄んだ青空の広がる日曜日、ちょっと暑いぐらいの陽気の中、今日は仙台市太白区にある東中田市民センターへうかがいました。名取市サポートセンターどっと.なとりが主催するサロンへ復興コンサートをお届けに来ました。
出演はおなじみのカルテット・フィデス(ヴァイオリン松山古流さん・熊谷洋子さん、ヴィオラ御供和江さん、チェロ石井忠彦さん)です。今日は「和(なごみ)のコンサート」ということで、いつもよりカジュアルに、色とりどりの仙台フィルTシャツを身に着けての登場となりました。
まずはクラシックの名曲コーナー。「ハイドンとドヴォルザークをご紹介したいと思います」と、『セレナーデ』や『皇帝』、『ユーモレスク』『アメリカ』からの一節を詳しい解説を交えて演奏しました。特にこの二人の作曲家は祖国への誇りと故郷への想いがあふれた作品を遺しています。
今日の参加者は宮城県名取市閖上出身の方がほとんどで、津波で故郷を失ってしまった人たちです。それでもやっぱり閖上が好きだ、仙台に住んでいても俺たちは閖上人だという彼らの心に、これらの曲はまた格別の響きをもたらしたのではないでしょうか。
後半は秋にちなんだ唱歌が続きました。会場のみなさんは「ちいさい秋みつけた」「里の秋」「七つの子」を一緒に口ずさんでくださいました。
最後は美空ひばりで締めます。「港町十三番地」を演奏すると、客席のノリが一段といきいきしました。閖上は港町でしたからこの曲が好きな方が多いんですね。その様子をみたヴィオラの御供さんが「次回は演歌リクエスト大会、ぜひやりましょう!」と言い、客席から笑い声と拍手が沸きました。「川の流れのように」では目頭を押さえる方の姿もありました。
アンコールでは「星に願いを」の調べにのせて客席のみなさんが花を振り、演奏と“共演”して終わりました。コンサートの後は、演奏家もご一緒してのお茶のみ会です。
あるご婦人が「美空ひばりは私の十八番だから歌いたいんだけど、津波で声が出なくなっちゃってね」と言いました。「でも、音楽ってほんとにいいね。ほんの少しの間でも津波とか忘れて楽しめるものね」と微笑みました。どこからか「復興公営住宅に申し込んだけど、あれは宝くじに当たるようなもんだからねえ…」と言う声が聞こえました。またある方は「今日友達に連れられて初めて来てみたけど、来てよかった」と言いました。
別れ際、演奏家に握手を求める方が幾人かいらっしゃいました。「ほんとによかった~!」「最後は涙が出たよ」「また来てけさいね」。演奏家もそれに応えて「また呼んでくださいね」「きっと来ますから」と再会を約束していました。まばゆい秋の風の中で、みなさんの心が弦のように共鳴していた午後のひとときでした。