お知らせ

南相馬市立太田小学校へ

2014.12.5

IMG_4350s福島県南相馬市の原町区にある太田小学校へうかがいました。
この地区の交通の要衝であるJR常磐線はまだ不通のままです。JR原ノ町駅から車で15分ほど南へ下ったところに学校はあります。まわりを田んぼに囲まれ一見のどかな雰囲気ですが、ここは福島第一原子力発電所からおよそ30㎞、学区の一部分ではまだ人が住めない状況です。震災後、太田小は他の小学校を間借りする形で転々としてきました。緊急時避難準備区域の解除に伴い元の場所へ戻りましたが、児童数は4割以下に減っているそうです。

IMG_4390s今回はPTA主催の行事として、児童も保護者も一緒に楽しめるようなコンサートをというリクエストをいただきました。出演は、いつも復興コンサートにご協力いただいている杜の弦楽四重奏団のみなさん(ヴァイオリン叶千春さん・門脇和泉さん、ヴィオラ齋藤恭太さん、チェロ塚野淳一さん)です。IMG_4393s
広々とした体育館に児童50名と保護者約40名が集まりました。より近い距離館で聴いていただくためステージは使わず、フロアに畳を敷いて客席とし、その目の前で演奏しました。さすがに12月ともなると寒いので、演奏家のそばにはストーブを置きました。
オープニングはモーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」でした。おなじみの曲が目の前で紡がれてゆく様子に子供も大人もすうっと惹き込まれていきました。
IMG_4401sヴィヴァルディの「春 第一楽章」ではヴァイオリンの叶さんが子供たちのそばを歩いて演奏しました。恥ずかしそうに笑う子や目を輝かせて見入る子がいました。

続く曲名当てクイズでは塚野さんが司会を担当します。子供の気を惹いたり、わざとじらしたり、塚野さんは子供たちをのせるのがとてもお上手です。ある曲のワンフレーズを弾くと「はいはいはいはい!」とたくさんの手が挙がりました。ある子は立ち上がり、ある子は両手を挙げ、ある子はジャンプしてアピールしてきます。よその学校でもクイズはやりますが、こんなに積極的な子たちは見たことがありません。元気いっぱいですね。IMG_4440s
意外に難関だったのがアンダーソンの「そりすべり」でした。クリスマスシーズンには必ず耳にするメロディなのに題名は知られていないんですね。塚野さんがお母さん方や先生にまでマイクを向けましたが、どの方も「曲は知ってますけど、タイトルはわかりません…」と恐縮していました。けっこうそういう曲はありますよね。
クイズの最後は太田小学校の校歌でした。ほとんどの子が手を挙げてすごい賑わいになりました。保護者の方々はその様子をほほえましく見ていました。みんなで一緒に校歌を歌うと、素直で透き通るような美しい歌声が体育館に響き、演奏家のほうがびっくりするぐらいでした。
IMG_4464sコンサートが終わって演奏家が帰り支度をしていると子供たちが話しかけてきました。屈託なくにこにことしていて、素朴で素直な様子に演奏家も嬉しそうでした。

帰りのタクシーで運転手さんから聞いた話です。ご自身も群馬に2年半避難していたそうです。
「震災直後はこのあたりから人が消えて、本当にゴーストタウンみたいだった。あの光景は忘れられないねえ」
徐々に人が戻り、現在では何事もなかったかのような日常の風景があります。戻ってきた方も、戻らないと決めた方も複雑な思いでいることでしょう。あの子供たちが元気にのびのびと暮らせますように、と心から願います。