お知らせ
美田園第二仮設住宅「年の瀬コンサート」へ
- 2014.12.10
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名取市に元々お住まいで、現在はみなし仮設にお住まいの方をサポートする「どっと.なとり」と、名取市内の仮設住宅をサポートする名取復興支援センター「ひより」(名取市社会福祉協議会)との共催で、美田園第二仮設住宅集会所にて「年の瀬コンサート」を開催しました。仮設住宅にお住まいの方ばかりでなく、周辺のみなし仮設にお住まいの方もどうぞ、というのが今日の主旨。普段は名取が丘に住んでいるけれど、元々津波に合う前は近所だったお友達がここにいるので、と参加されていたおばあさんもいらっしゃいました。
出演はチームA。仙台フィルから首席オーボエ奏者の西沢澄博さん、第2ヴァイオリン副首席奏者の小川有紀子さん、そして多賀城市在住のpf.阿部玲子さんの3名です。名取市は仙台市のお隣ですが、仮設住宅での復興コンサートは、音楽の力による復興センター開設以来初めてのことでした。9:30からは毎日”おらほのラジオ体操”をみんなでする、というこちらの集会所。リハーサルを一旦ストップして、演奏家もスタッフも一緒に住民の皆さんとラジオ体操です。(ピアノの阿部さんは、既にドレスに着がえていらしたのですが、もちろん一緒に体操されましたよ)。その後、どんどん人が集まり出し、開演5分前にはほとんど用意した椅子が埋まっていました。開演前に満席、ということは、復興コンサートでもなかなかないことですので、今日のコンサートへの皆さんの期待がこちらにも伝わってきます。
こちらの仮設住宅にも、クラシックの演奏家はあまりいらしていなかったそうで、今回はヴァイオリンの小川さんが「せっかく普段、クラシックを専門としている私たちが伺わせていただいたので、クラシックにも、こんないい曲があるんですよ、とご紹介できたら…」と、まず1曲目にJ.S.バッハの「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲」を演奏。全楽章といっても15分程度の短い曲ですが、楽章間に楽器紹介なども挟みつつ、副首席&首席奏者のお二人による演奏でしたので、なお一層バッハの音楽独特の密度の濃い、音楽に込められた生命力や、ヴァイオリンとオーボエそれぞれの音色の美しさ、凛とした音色・柔らかい音色、など様々な音楽の表情の変化を感じていただけたのではないでしょうか。その後はヴァイオリンのソロ、オーボエとピアノによる美しい旋律のドビュッシーの「夢」から、美空ひばり「川の流れのように」へと幅広いジャンルでコンサートは進みました。耳馴染みのある美空ひばりが聴こえると、ほっと表情を緩ませて歌い出された方も。その後オーボエの西沢さんが「クリスマスも近いですから…」と阿部さんを見ると、ピアノの上にはサンタクロースの帽子が3つ用意されているではないですか!さっそく帽子を被ると、トナカイのそりがこちらに近づいてくるような楽しい「そりすべり」と讃美歌「Oh!Holly Night」を演奏。あっという間に、クリスマスのわくわくとした雰囲気が思い出されました。
演奏の後は、みなさんとの茶話会です。演奏家それぞれの周りにはあっと言う間に話の輪ができ、盛り上がっている様子…。でも後から聞けば、あちらでは家族構成の話、こちらでは漬物話に端を発しての“存在の喪失”について、またその隣りでは「うちなんて、土台しか残されないで津波にぜ〜んぶ持って行かれたのよ~」という話や「(被災直後は)下着だって代わりがないから、10日も同じのはいでだのよ〜皆、寝静まってから、こっそりやっと洗濯しでさ〜」と避難所生活での苦労話も。「3年半も経ったっていうけど、そんな感じは全然しないねぇ…」というおばあさんも、間もなく着工が始まる復興公営戸建て住宅の話になると、やはり嬉しそうでした。
コンサートの最後にみなさんで歌った「花は咲く」、仮設の皆さんがそれぞれ自分の家に移られた時に、またぜひ一緒に歌えたら、と思いました。