お知らせ
「けせん福幸コンサート」その2
- 2015.1.26
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霧雨の陸前高田から車で30分、しとしと雨の大船渡に着きました。いわて生協けせんコープ主催「けせん福幸コンサート」、夜の公演は大船渡リアスホールでの開催です。出演は午後の公演と同じく仙台フィルハーモニー管弦楽団木管五重奏(フルート芦澤曉男さん、オーボエ西沢澄博さん、クラリネット副島謙二さん、ホルン須田一之さん、ファゴット海野隆次さん)です。
リアスホールは、津波で壊滅的な被害を受けた周辺地域において唯一稼働できた公共施設ということで、震災直後からひっきりなしに数えきれないほどの催し物が行なわれたそうです。4年近く経ってようやく演奏会が開催できた陸前高田とここ大船渡とはだいぶ様子が異なりますね。
さて、会場のマルチスペースには老若男女150名ほどの参加者が集まりました。けせんコープでは「音楽の勉強になるように、そして将来のことを考えるために」と大船渡第一中学校吹奏楽部25名をご招待していました。演奏家にとっても有り難いお心遣いです。本日2回目の公演、体力的にはけっこうキツいはずなのですが、演奏家のみなさんは変わらず生き生きとした演奏を披露しました。
クラリネットという楽器そのものが主役となる「だんだん小さく」では、副島さんがクラリネットを少しずつ分解しながら演奏します。取り外すたびに客席から「おお〜」「わ〜」というどよめきが起こり、観客は「一体どうなってしまうんだろう」とはらはらしながら成り行きを見守っていたようでした。最後にマウスピース部分だけでのファンファーレが鳴ると、大喝采となりました。
ここでも「北国の春」を演奏したのですが、大船渡と言えばむしろ新沼謙治です。「隣町の歌ですが、ご近所ということでご勘弁ください。新沼さんの楽譜が見つからなくて・・・」と西沢さんが詫びるのを観客のみなさんは微笑ましく見ていました。
その後、めでたい新春シリーズと銘打ってヨハン・シュトラウス2世「観光列車」「エジプト旅行」「美しく青きドナウ」を演奏しました。「観光列車」で芦澤さんがフルートとピッコロを何度も素早く交換して吹く様子に客席から「わ、すごい」という感心と「がんばれ!」という応援のこもったくすくす笑いが聞こえてきました。最後に芦澤駅長のホイッスルが鳴り響き、無事に列車は到着、大いに受けていました。
「エジプト旅行」はエキゾチックな和音が特徴の曲です。突然、芦澤さん、西沢さん、須田さんが床を踏み鳴らしながら「ラーイライライラーイ」と歌い出す演出もあり、お客さんは度肝を抜かれて「おおお」と目を丸くしていました。
締めは、日本の正月番組でおなじみ「美しく青きドナウ」です。これはワルツの中のワルツと称される名曲です。ゆったりとした調べに身をゆだねて左右に揺れながら聴いている方が多くありました。たっぷりと優雅なひとときを堪能していただけたことと思います。
ここでも最後にみんなで「花は咲く」を歌いました。東北ではテレビでおなじみの曲ですが、木管五重奏のアレンジはいつもと様子がちがっていることもあって、どの方も演奏をよくよく聴きながら歌っていました。自然と歌う人と演奏する人の呼吸が重なり、ぴたりと合わさります。音楽を通して、いまこの瞬間に人と人とが呼吸を重ね、心を重ねていることの不思議に胸打たれました。一期一会の束の間の出会いかもしれませんが、しかし、ともに生きている瞬間がここにあると感じました。
終わって、吹奏楽部の生徒たちとけせんコープの委員さんたちと記念写真を撮りました。とくに委員さんたちは今日のイベントを成し遂げた達成感と、観客から寄せられた感謝で輝くような表情をしていたように見えました。
気仙地区の復興の道のりはまだまだ遠い様子です。
またきっと伺いますね。一緒にまた歌いましょう。 (み)