お知らせ

【文化庁派遣事業】亘理町・いちょうの実幼稚園へ

2015.2.2

 音楽の力による復興センター・東北は、
平成26年度文化庁芸術家派遣事業〔東日本大震災復興支援対応〕の
音楽プログラムをコーディネートしています。

宮城の県南、海に面した亘理町にあるいちょうの実幼稚園に伺ってきました。これまでにも復興コンサートで2度伺ったことがありますが、今日は文化庁芸術家派遣事業として伺いました。先週金曜日に降った雪は、温暖な亘理町でもまだ残っていました。今朝は、子供たちの歩くテラスに氷が張ってしまい、氷を割る作業から先生たちの一日が始まったそうです。出演は杜の弦楽四重奏団。ヴァイオリン叶千春さん、駒込綾さん、ヴィオラ齋藤恭太さん、チェロ塚野淳一さんです。

亘理町は海に面した平野であるため、震災時には多くの方が津波で命を落とされました。いちょうの実幼稚園にも、仮設住宅で暮らしている子、福島から避難移住してきた子など、様々に影響を受けて暮らしている子供たちが少なくありません。先生方から、できればぜひ保護者のみなさんにも一緒に楽しんでいただきたい、との申し出があり、15名ほどのお母さんたちと園児の兄弟たちも、一緒にコンサートを楽しみました。

いちょうの実1コンサートは、モーツァルト「アイネクライネナハトムジーク」第1楽章から始まりました。よく響くホールはあっと言う間にコンサートホールに早変わりです。目の前から聴こえてくる弦楽器のすてきな音色、そして演奏者の真剣な姿を、子供たちは食い入るようにじっと見つめています。楽器紹介では、叶千春さんの「弓の毛の部分は何の毛で出来ていると思う?」という質問に、「うさぎ!」「ぞう!」「ひつじ!」「とら!」「しまうま!」と色んな動物の名前が登場。尻尾の長い動物、ということで、子ども達は徐々に大きな動物を思い浮かべたようです。いちょうの実2ヴィヴァルディ「春」では、千春さんが子供たちの中歩きながら演奏します。はじめて近くで見る・聴くヴァイオリン、色んな方向から聴こえてくる音を、子供達は嬉しそうに見上げていました。

いちょうの実3チェロの塚野さんに司会が移ると、曲当てクイズコーナー。なんと民謡「斎太郎節」(大漁節・大漁唄い込み、とも言われます)も演奏されました。子供達は曲名は分からなかったのですが、手を挙げる子が何人も。塚野さんがマイクを向けると「演歌!」子供達の発想力に、なるほどねぇ~と大人たちは笑ってしまいました。その「斎太郎節」に合わせて、子供たちも手拍子で参加してくれました。クイズコーナー最後は、子供たちからリクエストのあった中川ひろたかさんの「にじ」。大きな声で、またサビの部分では振り付きで歌ってくれました。子供の声で歌われると、なぜだか染み入る歌なのです。演奏家のみなさんも「聴きながらじ~んと来た!」と。なんだか子どもたちの歌声に、大人が励まされた時間でした。

本編最後は、チャイコフスキー「弦楽四重奏曲 第1番」から第4楽章の一部を。演奏家も真剣なら、その真剣さは子どもたちにもしっかり伝わっていました。その聴いてくれる態度の、集中度合いの高いことと言ったら!4人の演奏家の息を呑むような掛け合いや、一瞬の間。そして終わりに向かって4つの楽器の音色が渦巻いて空に昇って行くような迫力。子どもたちも、何かを感じ取ってくれていたようでした。演奏家のみなさんも挑戦だったかと思うのですが、子ども達のあの真剣な表情を見ていると、今回の挑戦はちゃんと彼らの心に伝わっていたように思いました。いちょうの実5

最後には、演奏家のみなさんにハイタッチしながら子どもたちも退場。最後になった男の子は、しばらく立ち止まってVn.駒込さんに一生懸命「素敵でした」と伝えてくれました。とてもよく聴いてくれたいちょうの実のみなさん、またきっとお会いしましょうね。