お知らせ

みやぎの「花は咲く」コンサート2015開催しました

2015.3.26

仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」/宮城野区被災者交流支援事業
 ≪みやぎの「花は咲く」合唱団プロジェクト≫
(主催:音楽の力による復興センター・東北、仙台市)
宮城野区の仮設住宅および津波被災地域にお住まいのおおむね60歳以上の方々と、
毎月1回、合唱の練習を重ね、宮城野区文化センターでコンサートを行ないました。
合唱指導は仙台オペラ協会の齋藤翠さん、伴奏はピアニストの佐藤亜紀さんです。

さて、いよいよ今日はみやぎの「花は咲く」合唱団の締めとなる《みやぎの「花は咲く」コンサート≫本番です。晴れ舞台にふさわしく、澄みわたる青空と暖かい陽気に恵まれました。
DSC_0005練習室に集まった合唱団メンバーはそれぞれに春らしい装いで、いつもより明るく華やいだ雰囲気でした。服装だけでなく、なにより本番へ向かうみなさんの気持ちがその明るさをもたらしているのでした。いつものウォーミングアップのあとは、整列する順番を確認し、登場の練習を入念におこないました。登場から退場までが演奏ですからね。そして、軽く発声練習をしてから、仙台フィルメンバーとの舞台リハーサルへと向かいました。
壇上に並んだ合唱団はわくわく、そわそわ、どきどきが入り混じった面持ちでした。管弦編成の演奏はいつも練習してきたのピアノ伴奏とは勝手が違うので、歌い出しのきっかけが取れるか、テンポを保てるか、楽器の音に声が負けてしまうのではないか、など心配なことがたくさんあります。でも、編曲を担当したチェロの山本さんがそのつど「この出だしはこうです」「歌はここで入ります」などわかりやすく説明してくださったので、合唱団も戸惑うことなくリハーサルできました。とは言え、やはり大舞台に気圧されてやや萎縮している様子もあります。ヴァイオリンの小川さんが「もう一度やってみましょう」と促してくださって、それぞれの曲を複数回練習できました。だんだんと歌声が大らかに、また、みなさんの居方も堂々としてきました。
あわただしくリハーサルの時間は過ぎて、休憩もそこそこに開場時刻となりました。入り口の前にはお客様がすでに列をなして待っていました。ご家族や友人が歌うこの大舞台を楽しみにしていたのでしょうね。

IMG_1563-みやぎの「花は咲く」コンサート、オープニングはグリーグ『トロルドハウゲンの婚礼の歌』です。本来はピアノ曲ですが、今日は弦楽四重奏で演奏されました。春らしい明るい曲調が幕開けにぴったりですね。
続いてはモーツァルト『アヴェ・ヴェルム・コルプス』を弦楽五重奏とソプラノ独唱で演奏します。翠さんがドレス姿で登場すると、客席で待機していた合唱団メンバーから「わあ~!」と歓声が上がりました。IMG_1606-
翠さんはずっと合唱指導に当たってきたこの2年を振り返り、「みなさんと共にしてきた時間は私の宝物です」と語りました。弦楽のハーモニーに乗せて空へと向かうような歌声が会場を包み込みました。
IMG_1612-次は木管パートが加わって、シュトラウスのポルカ『観光列車』です。翠さんの「出発進行!」の掛け声で軽快に走り出しました。弾むリズム、車窓の風景が目に浮かぶような展開にお客さんも乗って楽しそうでした。
ここで、合唱練習で伴奏を担当したピアニストの佐藤亜紀さんが紹介されました。管弦8重奏と共演するのはアンダーソン『忘れられし夢』です。遠い昔を思い出すような、もの悲しげなピアノの旋律が印象的で、しっとりとした空気が辺りに満ちました。亜紀さんは「合唱の練習は楽しかったです」と語りました。IMG_1642-
9重奏によるチャイコフスキー『花のワルツ』ではオーケストラを聴いているような気分になりました。それぞれの楽器が違うメロディーを奏で、それが重なり、交差し、響き合って大きなひとつの調和を生み出し、人の心に働きかけている。当たり前のことですが、あらためてその不思議を感じました。

IMG_1683-さて、いよいよ合唱団の出番です。練習の甲斐あってスムーズな登場、まずは一安心です。合唱団の雄姿を翠さんと亜紀さんは客席から見守っています。
一曲目の『ふじの山』は、いつも雄大な富士山をイメージしながら練習してきました。この大きな会場にもそのイメージが立ち上がるような力強い歌声でした。
続く『知床旅情』では、客席でも体を揺らしながら小さく口ずさむ人の姿が多くありました。
いよいよ最後の曲、『花は咲く』となりました。IMG_1737-IMG_1736-
もともとこの1曲だけを歌うために集まった合唱団ですから、それだけ大切にしてきた曲です。これを歌うのも最後かと思うと、合唱団には気魄のようなものまで感じました。じつはメンバーは「今日は絶対泣かない!」と頑張っていたのですが、やはりこの4年間のことが思い出されて、涙をこらえきれなかった方がたくさんいました。お客さんも涙を拭いつつ一緒に歌いました。演奏家の目もうるんでいました。
IMG_6192-歌い終わると、大きな拍手が沸き、「ブラボー」の声が聞こえました。アンコールはドヴォルザーク『家路』です。オーボエの哀愁ある旋律に導かれるようにして、優しい歌声が会場を満たします。歌いおさめの「安き御手に護られて いざや楽し夢を見ん」という言葉が、みなさんのこれからのお守りになりますように。
前回のコンサートからおよそ1年が経ち、今こうして二部合唱でハモれるまでになったことを考えると、その成長ぶりは感動的ですらあります。60歳以上(最高齢は82歳)で構成された「花は咲く」合唱団ですが、練習から本番までずっとそばで見ていて、人間は何歳になっても成長できるし、変わることができるということを教えていただきました。
終演後、翠さんと亜紀さんは「本当に良かった」「感動しました」と合唱団メンバーと喜び合っていました。都合で出演できなかったメンバーがみんなのためにと布細工の花を手づくりしてきてくださって、労をねぎらっていました。安堵と達成感の混じった表情がじつに晴れ晴れとして、美しく見えました。花は咲く
観客アンケートでもたいへんな好評で(回答率はなんと75%!)、「素晴らしかった」という賛辞に加えて、「ありがとう」という感謝の言葉がたくさんありました。音楽を通じて、歌う人と演奏する人と聴く人とがともに心かよわせた佳き日となりました。
《みやぎの「花は咲く」合唱団》は今日でいったん一区切りとなりますが、この出会いや経験はきっときっと合唱団メンバーのこれからの歩みを支えてくれるものと思います。
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この企画に関わったすべての方に感謝いたします。またいつか、会いましょう。どうもありがとうございました。