お知らせ
「復興コンサートin西円寺」開催しました
- 2015.4.26
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宮城県最南端の丸森町は、山と川に囲まれた自然の恵みあふれる美しい地域ですが、福島第一原発事故による放射能汚染とその後の風評被害で、特産のシイタケや干し柿、イノシシの出荷に大きな影響が出ました。地場産品加工場や業者が廃業するなど、中心街では空き店舗が増え、人口が減り、町からは活気が失われている状況です。
この町の古刹である西円寺の副住職、石龍英紀さんは、2年前に宮城県角田市のお寺で行なわれた復興コンサートをごらんになり、ご自身のお寺でも開催して、丸森の人びとに元気になってもらいたいと考えたのです。コンサートのサブタイトルは「あなたの心に安らぎと希望の光を」とご提案いただきました。
今日は年に一度の観音講です。多くの檀家さんが楽しみにしていて、「普段、足腰が悪くて出歩かないようなご高齢の方々もこの観音講にはがんばって参加するんですよ」とのお話しをうかがいました。役員さんたちも熱心で、観音講の準備に余念がなく、当日の運営にも多くの町民が関わるそうです。
今朝の丸森は素晴らしいお天気で、まばゆい陽光の中に新緑が映えて、すがすがしい気分になります。山々はうぶ毛が生えたようにほわほわとしていて、季語の「山笑う」とはこの風景のことを指すのでしょうね。
さて、本日の出演は復興コンサートおなじみの、仙台フィルメンバーによる弦楽四重奏団カルテット・フィデス(ヴァイオリン松山古流さん&熊谷洋子さん、ヴィオラ御供和江さん、チェロ石井忠彦さん)です。
控室はなんと位牌堂でした。言うなればこの地域の、ある種の歴史が詰まったお部屋ですね。たくさんのご位牌に見守られながら、リハーサルをしました。お寺のお嬢さんがとても興味深そうに聞いていました。
演奏会場の本堂には、200名ぐらいの来場者が文字通りのすし詰め状態で座っています。
みなさん本当にこの会を楽しみにして待っていたことがよくわかりました。中に入りきらない方は縁側からのぞきこんでいます。その様子に「うわー!」と演奏家も圧倒されていました。まずは、ハイドン「ひばり」、ヴィヴァルディ「春」全楽章、続いてクライスラー「愛の喜び」「美しきロスマリン」が演奏されました。いずれの曲も明るくて、歌うような踊るような旋律が今日の雰囲気にぴったりです。進行役の御供さんが各作曲家にまつわるエピソードを紹介しました。お客さんには西洋音楽の巨匠たちも同じ人間なんだなと身近に感じられたのではないでしょうか。
コンサート中盤は「みなさん、出番ですよ!」と日本の懐かしい歌を演奏に合わせて一緒にうたっていただきました。「朧月夜」「みかんの花咲く丘」「宵待草」「北国の春」などなど、温かいやさしい歌声が本堂を満たし、笑顔が花咲きました。
アンコールで「星に願いを」が演奏されると、女の子が小さな声で静かに歌っているのが聞こえました。おじいちゃんおばあちゃんも弦楽の調べにしみじみと聴き入っていました。
終演後は、この日のために丹精したトキソウの鉢植えが演奏家に贈られました。
去り際に多くの方から「よかったです」「最高でした」「またご縁がありますように」と感謝のお声をいただきました。どうもありがとうございます。
観音講を取り仕切る講長さんは「クラシックの生演奏を聞いたのは生まれて初めてでした。なかなかいいものですね」と笑いました。控室に戻った演奏家は「今日はお世話になりました」と、たくさんのご位牌に向かって「G線上のアリア」を献奏しました。
何百年も受け継がれてきた音楽があり、お寺があり、町の歴史があり、美しい自然があり、人の想いがある。
そういうものをこれから先の世代に手渡していけたらいいな、と改めて思いました。