お知らせ
東松島・高齢者総合福祉施設たんぽぽへ
- 2015.4.27
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初夏の陽気となった今日は、宮城県東松島市赤井地区にある高齢者総合福祉施設たんぽぽへ伺いました。
代表取締役の伊藤さんは震災前に大曲浜で在宅介護サービスを提供していましたが、津波によりスタッフとご家族を喪い、自宅ほか多くのものを失いました。同じように家を失った地域のお年寄りからの要望もあって、2012年の夏にこの老人ホームを開設したそうです。「もう絶対に津波が来ない場所にした」とおっしゃっていました。
さて、本日の復興コンサートは「音の花束コンサート」と銘打ち、仙台フィルのヴァイオリニスト小川有紀子さんと小山あずささん、ピアニスト相澤やよいさんのトリオが登場しました。
演奏会場はいつも食堂として使われているスペースで、グランドピアノがあります。利用者さんと施設スタッフを合わせて40名ほどの方が集まりました。
まずはエルガー「愛の挨拶」に始まり、クライスラー「愛の悲しみ」「序奏とアレグロ」、モシュコフスキー「2つのヴァイオリンのための組曲」、ブラームス「ハンガリー舞曲第6番」など、独奏と二重奏を組み合わせてヴァイオリンの魅力をたっぷりと紹介しました。 緩急自在、あるときは流麗、あるときは豪快な、迫力ある演奏でした。
相澤さんは「スケートの浅田真央さんが使った曲です」と、ピアノのソロでショパン「ノクターン」を演奏しました。
小川さんが「復興コンサートでは、みなさんと一緒に歌うということをやっています」と言い、「七つの子」と「花」を共演しました。「あら、○○さんが歌ってる」と或るスタッフさんがうれしそうにしていました。
代表の伊藤さんが「ヴァイオリンを初めて聞いた人は?」と質問すると、半数くらいの方がさっと手を挙げました。「カラオケもいいけど、たまにはこういうのもいいでしょ」と言うと、多くの方が笑ってうなずいていました。ところで、代表の伊藤さんはこの地域に伝わる大曲浜獅子舞保存会の会長も務めています。地域のお祭りだけでなく、遠く静岡や沖縄にまで招聘される活躍ぶりです。
「この獅子頭は津波に流されたのを拾われたんですよ」「この太鼓はあのときのままです」と、大切な道具を見せていただきました。
「せっかく来ていただいたんで、縁起物で噛みますね」と、獅子頭で演奏家それぞれの頭をぱくりとくわえていただきました。
「町も何もすっかりなくなったから、せめてこれだけは残そう、俺たちにはこれしかない、と思ってやってます」とおっしゃいました。「死ななかったから、がんばるしかないよねえ」と笑う伊藤さん。その笑顔の裏にこれまでどんなにか御苦労があっただろうと偲ばれます。
コンサートの中で小川さんはご自身の楽器が数百年受け継がれてきたことを話していましたが、民俗芸能にしろ音楽にしろ、「受け継ぐもの」を持つ人びとのしなやかな強さを見た気がしました。
「また来てくださいね」「また来ます」と言って、おいとましました。