お知らせ
なかの復興ふれあいコンサート
- 2015.5.30
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5月最終日の今日、仙台は真夏のような暑さです。仙台と石巻を結ぶJR仙石線が震災から4年以上の歳月を経て、ようやく本日全線開通となりました。駅も電車も多くの人で賑わっています。私たち復興センター事務局員はその仙石線の陸前高砂駅で降り、中野地区へと向かいました。
震災当時は津波による床下浸水程度の被害で済んだそうですが、以降はほかの被災地からの移転者が急激に増え、この町内会のおよそ5分の2に相当する50世帯が新住民だそうです。瀟洒な戸建て住宅が立ち並び、町の風景がみるみるうちに変わっていきます。町内会から「新しい人たちと昔から住んでいる人たちとの交流の場をつくりたい」との要請で、高齢者を対象とした「なかの復興ふれあいコンサート」を行なうこととなりました。
出演は杜の弦楽四重奏団(ヴァイオリン叶千春さん&門脇和泉さん、ヴィオラ齋藤恭太さん、チェロ塚野淳一さん)です。会場にはおよそ35名の方が集まりました。
モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」で華やかに幕開けし、パッヘルベルの「カノン」やヴィヴァルディ「春」など、まずはおなじみのクラシック名曲が披露されました。
「こんなに間近で聴く生の演奏はちがうねえ」と町内会長さんが感心していました。千春さんが「和室で聴く演奏もよいものでしょう?」と言うと、「うん、うん」とみなさん大きくうなづいていました。
ご当地ソングの「青葉城恋唄」、民謡の「斉太郎節」では、客席のあちこちから歌声が湧いてきました。自然と体が揺れて、みんなで踊っているかような感じがしました。
杜の弦楽四重奏団好例の曲名当てクイズでは、イントロの数小節が聞こえた瞬間に「北国の春!」と大きな声で答えてくださる方がいて、すばらしく盛り上がりました。
杜の弦楽四重奏団では今日のために演歌のレパートリーを増やしてきたのだそうです(どうもありがとうございます!)。塚野さんのお客さんいじりが笑いをよび、意外なひっかけ問題もありつつ、戦後から昭和後期の歌謡曲や映画音楽をたっぷりとお楽しみいただきました。
最後に坂本久メドレーが演奏されると、若かりし頃を思い出しているような表情でしみじみと聴き入る方がたくさんいました。きっとどの方にも人生を彩ってきた音楽があるのでしょうね。
終演後、町内会の方から手づくりの花束が演奏家に贈られました。自宅の庭に咲いている花々を摘んでアレンジしたのだそうです。みずみずしい薔薇や芍薬がことのほか佳く香っていました。なかの町内会に限らず、東北のいたるところではたくさんの人々が移動し、新しい町づくりが課題になっています。例えば、楽器の演奏はそれぞれの楽器がみなちがうメロディを奏で、みな異なる仕事をしています。それが組み合わされると豊かなハーモニーとなって何倍もの響きを生み出します。町づくりもきっとそんなふうに、ちがう人たちがちがうことを精一杯やることで豊かなものになっていくのでしょう。人と人をつなげる音楽の出番はますます増えて来そうです。