お知らせ
【文化庁】宮城県石巻好文館高校音楽部へ
- 2015.8.19
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*音楽の力による復興センター・東北は、
平成27年度文化庁芸術家派遣事業〔東日本大震災復興支援対応〕の
音楽プログラムをコーディネートしています。*今日は、sop.千石史子さん、pf.白川多紀さんのお二人と、石巻好文館高校に伺いました。以前は石巻女子高等学校だったこちらの学校、校門には左右に、両方の校名が掲げられていました。
年度明け6月に実施校募集がかかるこの事業。なかなか、中学校や高校からの申込みは少ないのです。そんな中、コンクール前に指導を併せたコンサートをお願いしたい、と顧問の先生からお申込みをいただきました。8月末に迫るコンクール直前となりましたが、仙台市出身で関東在住の、ソプラノ千石史子さんにお引き受けいただけることになりました。ピアノは千石さんからのご紹介で白川多紀さん。今年の「ラ・フォル・ジュルネ」でも共演されていらっしゃいます。
石巻に到着し、石巻好文館高校音楽室でさっそくリハーサルが始まります。小柄な体の一体、どこからと!思うほど豊かな声量とうつくしい声。リハーサルを聴きながら、これは音楽部21名だけに聴いていただくのは、さすがにもったいないと、顧問の水井先生と相談し、隣の教室で練習していたマンドリン部や、職員室・事務室の先生方にもお声掛け…。急なお誘いでしたが、コンサートが始まる時間までに、50人弱の方が集まってくださいました。
演奏家の方は、普段はドレスを着てコンサートをされるわけですが、今日はその後にレッスンも控え、着替えの時間もできるだけ、指導に廻しましょう…ということで、お二人とも普段着での演奏会となりました。
コンサートのはじめは、カッチーニ「アヴェマリア」から。白川さんのそっと歌い出すようなピアノの繊細の音色、千石さんの美しい密やかな歌い出しに、聴いていたみなさんが息を潜めるのがわかりました。震災後、演奏会のはじめには、必ず「アヴェ・マリア」を歌われると、以前お聞きしたことがありました。被害の大きかった石巻市中心部と言える場所に建つ、ここ好文館高校。歌の間は、音楽室がひととき祈りの場になったようでした。
その後は、ヘンデルのオペラアリアからよく知られた2曲。「ヘンデル、という作曲家をご存知の方?」という問いかけに、あちこちで手が挙がります。そしてプッチーニの歌劇「ジャンニスキッキ」から「私のお父さん」。いずれも、オペラのあらすじの紹介があり、その歌う人物の置かれた状況や心境を、想像しながら聴くことができました。山田耕筰「この道」「赤とんぼ」では、それぞれの日本語の詩がよく聴こえるように、とても丁寧な、心のこもった唄を聴かせてくださいました。集まったみなさんも、とても集中して聴いていらっしゃるのがわかりました。
心地よい緊張感のなか、30分間のコンサートはあっという間でした。校庭からのソフトボール部の練習の声や、3階にある音楽室を吹き抜けていく風も気持ちよく感じられたひとときでした。
音楽部は、ここからレッスンが始まります。上田真樹作曲「朝あけに」は、女声三部合唱。「e」の母音の響かせ方、声を喉の奥ではなく自分の前に送ること、歌っていない時から音楽の流れを感じ、その流れに声を乗せること(「流しそうめんのように!」)、音のアーチを大きくイメージすること(フレーズを大きく、遠くへ)、低音になるときにも頬骨の位置は高く保つこと、眼も眉毛も恥ずかしがらずに大きく開いてみること…など、先ほど演奏を聴かせていただいたばかりということもあり、こんな風にひとつひとつをして歌うことで初めて、幅の広い表現に繋がっているのだな、と隣りで見ていても感じました。生徒のみなさんも、千石さん「ここの、こんなことが気になったので、ちょっとこんな風に試してみましょうか」という指摘を、ひとつずつ積極的に試し、違いを納得していたようでした。考えて、イメージを確かにもって、やってみる、ということで、直前の演奏とはがらりと変わるのがわかりました。どうぞ今週・来週末とつづくコンクール、頑張ってくださいね。
余談ですが、準備室には、古い古いピアノが置いてありました。納品の日付は昭和27年2月。明治37年に私立石巻女学校として始まり、昭和27年というと既に宮城県石巻女子高等学校となっていた頃のようです。昭和28年には、定員900名という規模でした。このピアノは現役、とはいきませんが、今も可愛らしい音がきちんとなるピアノ、ぜひ大事にしていただきたいなぁ…。