お知らせ

会津若松「小法師サロンクリスマスコンサート」へ

2015.12.22

福島県のほぼ中央にある会津若松市には、福島第一原子力発電所の事故により避難を余儀なくされた多くの方が暮らしています。自治体機能ごと移設した大熊町をはじめ、浪江町、双葉町、飯館村ほか沿岸部7町村からの人たちがいらっしゃるとのことです。
会津若松市社会福祉協議会では、そんな方々のために季節に一度「小法師(こぼし)サロン」という交流の場を設けています。これまで手芸や園芸などを行ってきましたが、今回は地域住民の方にも呼びかけてクリスマスコンサートを開催することにしました。移転してきた人と元々この町に住んでいる人、あるいは、避難してきた人同士の中にもにある壁のようなものを取り払って、子どもも大人もみんなで音楽を楽しみ、これからの地域交流のきっかけにしたい、というご依頼でした。
1097さて、今日の出演はヴァイオリン叶千春さんと駒込綾さん、ヴィオラ羽川涼子さん、チェロ塚野淳一さんによる弦楽カルテットです。叶さんと塚野さんは仙台から、駒込さんと羽川さんは山形からやってきました。12月の会津はおそらく積雪が…という心配をよそに、うららかな暖かい日となりました。
会場の会津若松市文化センターは鶴ヶ城のそばにあります。赤ちゃんからお年寄りまで100名近い参加者が集まりました。「晴れてよかった。もし雪だったら来られなかったもの」というお客様がいました。このコンサートを楽しみにしていてくださったんですね。ありがとうございます。今日は小学校の終業式の日だったので、児童クラブの子供たちも来てくれました。1105
1138コンサート前半はクラシックの名曲集が演奏されました。おなじみの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』『春』などに続き、演奏家は「今日は弦楽四重奏ならではの響きをお楽しみいただきたいと思って、この曲を用意しました」と、ハイドン『ひばり』を演奏しました。弦楽四重奏はもとより、コンサートに行ったことのない方たちが多いとの話を事前にうかがった上での選曲です。この機会に堪能していただけたらさいわいです。
お客さんは1曲目からちょっと前のめりに、耳を澄ますようにして聴いていました。音楽が好きな人が多いのでしょうか、一音も聞き逃すまいとじっと見つめている方、ゆるやかに体を揺らして弦の調べに身を委ねる方など、客席の集中度が高いなあと傍で見ていて感じました。8717
8664後半は、日本の歌を中心にしたプログラムです。会津と言うことで、鶴ヶ城にちなんで『荒城の月』、そしてご当地の民謡『会津磐梯山』が披露されました。客席からは小さく歌声が聞えてきました。『会津磐梯山』は塚野さんがこの日のためにと編曲したスペシャル版です。現代曲のような不思議な和音の掛け合いがちょっと滑稽で楽しいアレンジです。途中で塚野さんと羽川さんが「は~あ、もっともだ~あ、もっともだぁ!」と原曲通りに景気のいい合いの手を入れたので、客席はどっ!と沸きました。
8678広い会場ではありましたが、お客さんが演奏を楽しんでいることが伝わってきて、ほのぼのとアットホームな雰囲気でコンサートは進行しました。途中、一人の赤ちゃんがむずかってお母さんがあわてて会場を出ようとしたときに、演奏家が「そのままで大丈夫ですよ~」と話しかける場面もありました。そのお母さんは会場を出ることなく、客席通路をゆっくり歩きながら、演奏のリズムに乗せて赤ちゃんをあやしていました。誰もがそれぞれの居方で音楽を楽しんでいる、すてきな光景だなあと思いました。1143
1177終演後は主催者から演奏家に記念の品が贈られました。特産品の会津木綿の工芸品と、郷土民芸品の起きあがりこぼしです。そう言えば、この会の「小法師サロン」という名前はここに由来しているんですね。倒されても倒されてもまた起き上がってくるこの小さな人形に、復興への思いを込めて。おきあがりこぼし
先の見通しがたたない状況の中、あきらめたりくじけそうになることもあることでしょう。そのときに、また立ち上がるためのささやかな力添えとなれるよう、音楽がもしお役に立てれば、と切に思いました。
舞台袖にいた司会担当のスタッフさんが「もう最初からなぜか涙が出ちゃって、あわててティッシュ取りに行きましたよ」と照れ笑いしていました。はい、生の音楽にはそういう力があるんですよね。
会場から徒歩数分のところにプレハブの応急仮設住宅群がありました。その駐車場には大きな除雪車がありました。暖冬とは言え、この豪雪地帯はこれから厳しい季節となることでしょう。どうかみなさんお元気で、またお会いできますことを!