お知らせ

沖野デイサービスセンターへ

2015.12.24

妙に暖かいクリスマスイヴです。今日は仙台市の東部、若林区沖野地区にある沖野デイサービスセンターにうかがいました。ここには津波で甚大な被害があった若林区沿岸部の荒浜や日辺地区、また、隣の名取市閖上地区出身の方も通所しているとのこと、家族や親戚を亡くした方、自宅を失った方もいらして、いまだ仮設住宅から通う方も何人かいらっしゃるそうです。職員の中にも津波で自宅を失った人がいるというお話しでした。日頃、このセンターに来る以外には外出する機会もなく、生の音楽に触れる機会がないご高齢の方々に、音楽の生演奏を聞かせてあげたいのです、との依頼をいただきました。
DSC_0473今日の出演はアンサンブル・ピノのみなさん(ヴァイオリン伊部祥子さんと熊谷洋子さん、ヴィオラ御供和江さん、ピアノ高塚美奈子さん)です。会場には施設利用者さんと職員さんをあわせて24名が集まりました。用意した席はびっしりと満席です。
ベートーヴェン『メヌエット』で始まったコンサート、前半はプッチーニやドヴォルザークなどクラシック曲で弦楽ならではの響きを至近距離でお楽しみいただきました。
後半はクリスマスにちなんだ曲と日本の唱歌が演奏されました。『きよしこの夜』『雪』などおなじみの歌を多くの方が口ずさんでいて、音楽がお好きな方が多い様子でした。
「ヴァイオリン、見たことありますか?」「みたことあるよー」
「弓に張ってあるこの糸は何でできているでしょうか?」「…うま。」
と、演奏家が話しかけると、客席からは小さい声ながら反応があって、和やかに進行しました。
DSC_0480アンコールでは『故郷』を演奏と一緒に歌っていただきました。すると、それまでの様子とはちがった力強い歌声が響き渡り、職員さんがびっくりするほどでした。歌っているときは若い頃に戻っているのかもしれませんね。音楽はひとを日常からちょっと離れた特別な時間に連れて行ってくれるのでしょう。その歌声に演奏家は感激してちょっと涙ぐんでいるようでした。音楽のある場にはときどき命の輝きのようなものがきらめく瞬間があります。
曲が終わると、大きな拍手が沸きました。ある方はぐっと腕を伸ばして頭上で拍手していました。或る方は「ありがとう、ありがとう!」と手を振っていました。DSC_0483
演奏家はとても嬉しそうな様子で、「すてきな歌をありがとうございました」とお客さんに拍手を贈り返していました。会場全体で、笑顔と拍手のプレゼント交換をしているみたいでした。

さて、今回が復興コンサートの今年の締めとなりました。今年もいろいろなところに出掛け、たくさんの人との出会いがありました。来年がみなさんにとってより良い年でありますようにと心から願います。