お知らせ
泉中央南「歌声サロン」_1月
- 2016.1.26
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仙台市泉区で唯一の復興公営住宅である泉中央南市営住宅では、
2015年10月から「歌声サロン」を始めました。
復興センターは音楽家をコーディネートし、泉区まちづくり推進課と
仙台白百合女子大学と協働して、このサロンを運営しています。西日本にけっこうな積雪をもたらした大寒波も今日は少し緩んだようです。空気は凍みるようですが、穏やかに晴れた空が広がっています。
今日はまず雪掻きから始まりました。楽器を搬入する道を確保しなければなりません。道路から玄関に至る歩道の雪を取り除け、その下でがちがちに凍り付いていた氷を割って、ようやく細い通路を削り出しました。集会所の軒先から垂れ下がるようにしていた雪の塊とつららも払い落としてから楽器を運び込み、準備に取り掛かりました。
さて、このサロンで音楽リーダーを務めるのは、毎度おなじみメゾソプラノ歌手の後藤優子さんとピアニスト田村聡子さんです。今日はおそろいのスノーホワイトのニットで登場しました。
会場には住民の方と支援団体の方などおよそ30名が集まりました。今日の課題曲は、唱歌の『雪』、ベートーヴェン『歓喜の歌』、そしてリクエストにお応えしての美空ひばり『川の流れのように』など、多彩な選曲でした。
まさかベートーヴェンなんて!とほとんどの方が驚いていましたが、こういう意外性がこのサロンの面白いところです。力強い旋律と歌詞に励まされるかのように自然と体が動きだして、けっこう楽しんでいた様子でした。
『雪』では童心に戻ったように弾んで歌っていた方や、『川の流れの~』ではしみじみと歌いながら涙をぬぐう方の姿もありました。ひとしきり歌って快い疲労感が訪れた頃、ティータイムとなりました。おいしいコーヒーと紅茶を用意するのは仙台白百合女子大学の有志メンバーです。
じつは、サロンが始まる直前にブレーカーが落ちて停電してしまうハプニングがありました。お湯が沸かせなくなってお茶の支度ができず途方に暮れた学生さんに「うちで沸かしてくるよ」と言って熱々のやかんを持ってきた方や、「うちの台所を使いなさい」と快く招き入れてくださった方があったおかげで、なんとかお茶を提供することができました。
「なんだかあの頃を思い出すねえ」という声が聞えました。震災直後の停電していた時期の暮らしが思い出されました。温かいお茶や明るい照明の有り難さが改めて身に染みた寒い午後でした。
みなさんがお茶を楽しむ傍らで、後藤さんと田村さんは『スタンドアローン』『三百六十五歩のマーチ』を披露しました。どの方もうっとり聴き入ったり、景気よく手拍子したりと大いに楽しんでいました。
終わって、演奏家はみなさんのお見送りに出ました。お茶の時間でもそうですが、じかに言葉を交わしあう機会が参加者にも演奏家にも大切です。
「元気が出ました!ありがとう」
「これまでの楽譜を全部ファイルしてあるのよ、ほら」
「ひさしぶりに大きな声を出せて楽しかったぁ。ときどき気持ちが落ち込んじゃうから…」
「歌の中で“人生は旅です”と言ってましたけど、私も旅の途中なんです」どうもありがとうございます。今日はトラブルに見舞われましたが、みなさんのご協力で楽しい時間になりました。音楽の息づく現場は、やはりそこにいる全員で創り上げるものなのだと思いました。また来月、よろしくお願いいたします!