仙台市若林区にある大和中倉町内会は創立50年を迎えた歴史ある町内会です。その昔、あたりは一面の田んぼで、遠い海まで見通せるほどだったそうですが、いまや幹道道路が縦横に走り、たくさんの住宅と高層マンションが立ち並ぶ町になりました。見た目は都会になっても昔ながらのつながりが強く、町内会活動は活発だそうです。
そんな地区に昨年復興公営住宅が完成し、現在56世帯が入居しているとのこと。町内会では公営住宅の人たちがこの地域に早くなじむようにと昨年12月に交流会を開きました。
今回の「ふれあいコンサート」もその一環として、公営住宅にお住まいの方と地域の人たちが出会い、交流するきっかけとするために開催する運びとなりました。
2月とは思えないほどのぽかぽか陽気に恵まれた日曜日、本日の出演はメゾソプラノ後藤優子さんとピアニスト田村聡子さんです。会場にはおよそ40名の来場者がありました。
演奏家のお二人が鮮やかな色のドレスで登場した途端、お客さんは「あら～」「まあ～」「すごいね～」とため息の嵐、オープニングの『アメイジング・グレイス』からすっかり惹きこまれていた様子でした。
町内会長さんからの「お年寄りにもわかりやすい曲を…」というご希望で、今日は歌謡曲をメインにしたプログラムが用意されていました。知っている曲が演奏されると、多くの方が一緒に口ずさんでいて、とても和やかな雰囲気です。
後藤さんの豊かな声量が会場を包み込むように響き、お客さんは手拍子や体でリズムを取りながら聴いていました。
田村さんが『トルコ行進曲』を独奏したときは、前のめりになって手の指と足の指をぱたぱた動かしながら聴き入る人もいました。きっとピアノ曲がお好きなんでしょうね。「こんな目の前で、生で聴けるなんてねえ」と感激している人もいました。 季節にちなんで『たのしいひなまつり』をみんな一緒に歌いました。男性の方もなつかしそうに歌っています。歌うときは童心に帰ったような、ちょっと自由な時間に心を遊ばせることができるのでしょうね。

プログラムが終わると「アンコール！！」の掛け声も大きく、拍手喝采で会場はわっと沸きかえりました。春の日差しがさらに一段と明るくなった気がしました。

終演後は演奏家もお茶のみ会に参加しました。おいしいおにぎりと漬物をごちそうになりました。おしゃべりする中で「のどのケアはどうするの？わたし、すぐ咳きこんじゃって…」との質問に、後藤さんは「鼻呼吸と姿勢が大事です」と言って肩甲骨を広げる体操や口角を上げる顔の体操を紹介しました。みなさんはそれをまねしながら「なるほどねえ」「やってみよう」と興味津々でした。
演奏家が帰るときはあらためて大きな拍手が沸き、握手攻めにあっていました。
今日も音楽を通じて多くの人が笑顔になっていました。公営住宅のみなさんがこの地域で和やかに穏やかに暮らしていけますように、と願います。