お知らせ

「いのちのつながり」復興コンサート

2016.3.21

IMG_9790s復興コンサートの記録を開始当初からずっと撮り続けているボランティアカメラマンの佐々木隆二さんが、みやぎ親子読書をすすめる会の総会で講演をすることになりました。タイトルは「いのちのつながり~戦場から震災へ~」。IMG_9814s
故郷の気仙沼市水梨地区からその昔出征した21名の肖像写真とともに、撮影時に彼らから聞いた話や震災後に佐々木さんが各地で見聞きしたエピソードを交えながら、東北人の死生観や命のつながりという不思議について語りました。
IMG_9633sこの講演にあわせて復興コンサートをご紹介する運びとなりました。出演は仙台フィルメンバーによる弦楽四重奏団カルテット・フィデスのみなさん(ヴァイオリン松山古流さん、ヴァイオリン熊谷洋子さん、ヴィオラ御供和江さん、チェロ石井忠彦さん)です。
フィデスは気仙沼をしばしば訪れ復興コンサートを行なっています。隆二さんもその様子をたくさん撮影しているご縁からご登場願いました。
2405震災から5年が経過し、現在も継続している復興コンサート活動をご紹介することは、いまだ復興途上の地域とそこに暮らす人々があることを思い起こしてもらえる機会になります。コンサートの進行を担当する御供さんと熊谷さんは、復興コンサートを続ける中で体験したこと、感じたこと、選曲への思いを語りました。
震災当初、亡くなった方への献奏として演奏された『G線上のアリア』、その後「明るい曲を聴きたい」との要望があって弾くようになったクライスラー『愛の喜び』、ヴィヴァルディ『春』、そしてその土地ならではの「これぞ!」という曲(例えば『北国の春』『おいらの船は300トン』)などを演奏しました。IMG_9707s
2449お客さんは演奏家の話に感心したり笑ったり、ときには一緒に口ずさみ、手拍子して楽しんでいる様子でした。また、演奏が終わった後の沈黙までを演奏家と呼吸を共にするようにじっくり味わっていて、御供さんが「会場全体が同じ時間の中にいましたね」と感激していました。

2471今回、主催者から是非にとリクエストされた歌がありました。それは戦災で焼け野原になった仙台で子供たちに夢を与えようと主に地元の音楽家たちが始めた「東北うたの本」というラジオ番組で放送されたものでした。
『春のあしおと』『仲よしの歌』『おくれ雁』を演奏し、会場のみなさんには一緒に歌っていただきました。60代から70代の人たちには懐かしい歌だそうで、子供のように体を弾ませて歌っている人が何人かいました。IMG_9699s
或る曲は明るい三拍子で、或る曲は小学校の校歌のようにはつらつとし、ある曲は意外な転調ぶりで、それぞれに特徴ある歌です。灰燼に帰した仙台の街にこれらの美しい歌声が流れ、春の芽吹きのように、雪解け水のように、人びとの心に明るさとうるおいをもたらしたことが想像されました。あのときの子供たちはこれらの音楽を友だちにして成長し、今ここで再び出会い、歌っているのです。
2475これまでの復興コンサートで演奏された数々の曲も、この歌たちのように、人びとの心を潤し、支えるものであってほしいと思いました。
「音楽は、言葉を経由せず、心と心をじかにつなげるものです」と演奏家は言いました。
「亡くなった人も一緒に生きてゆくんです」と写真家は言いました。2461
人と人のつながりを回復するときに、芸術はお役に立てることがあると私たちは信じます。復興はまだまだ道半ばです。これからもこの音楽の力をお届けに行かなければ、と改めて思いました。