お知らせ

みやぎの「花は咲く」合唱団_振り返りの会

2016.3.31

仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」
宮城野区被災者交流支援事業
≪みやぎの「花は咲く」合唱団≫
宮城野区の仮設住宅、復興公営住宅、防災移転地区、または津波被災地域に
お住まいのおおむね60歳以上の方々と、毎月1回合唱の練習をしています。

DSC_0678青空とぽかぽか陽気に恵まれた年度最終日です。今日の振り返りの会には、合唱団員26名が集まりました。追悼式の大舞台を終え、心なしかみなさんの表情が明るくほっとしたような感じに見えました。何か一つの区切りがついたようにも見えます。
ところで今日はスタッフも予期していなかったスペシャルゲストが登場しました。いつも合唱指導を務める齋藤翠さんの旦那様、江原実さんです。合唱団メンバーは手をたたいて大喜び、ひゅーひゅー冷やかしている人もいました。DSC_0679
江原さんは藤原歌劇団に所属するバリトン歌手です。お話しする声も深い響きを持っていて、「皆さんの活動のことはよくうかがっています。これからも頑張ってください」と素敵な声と優しい笑顔で激励してくださいました。
江原さんがアカペラで『荒城の月』を歌うと、みんな「ほぉぉ~」「すごいね~」とたまげたような、感心したような様子で歌声に聴き入っていました。江原さん、素敵なサプライズをありがとうございます!
その後は、いつものようにみんなで体操をしました。宮城野区家庭健康課の庄司さんがリーダーとなって、背中や脚の曲げ伸ばしや輪になってマッサージをしました。
DSC_0689 DSC_0691「マッサージする時には、前の人に“よく頑張ったね、素晴らしかったです”と褒めながらさすってあげてくださいね」と庄司さん。1月、2月、3月と毎月出演続きだった合唱団ですから、さぞかし疲れたことでしょう。みんなでお互いの労をねぎらいました。とても和やかで朗らかな時間が流れていました。体も気持ちもほんのり温かくなりました。
DSC_0694続いては、本日の特別企画「講師によるミニコンサート」です。合唱指導の齋藤翠さん、伴奏の目々澤亜紀さんに加えて、ヴァイオリンの吉田和久さんが参加です。吉田さんには2月の練習会に翠さんのピンチヒッターとして助けていただいたご縁があります。
それぞれ春にちなんだ曲を披露していただきました。DSC_0695
まず、亜紀さんが『さくらさくら』を、翠さんは『早春賦』『花』を披露しました。きっと毎年この時季になるとよく聞く曲なのでしょうけれど、やっぱり好いものですね。気持ちがぱあっと明るくなります。
DSC_0702最後に吉田さんと亜紀さんがベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番『春』第一楽章を演奏しました。ヴァイオリンとピアノのダイナミックな掛け合いに、「おおぉ…」と圧倒され気味の合唱団メンバーです。目を閉じてじっくり聴き入る人、間近で見るヴァイオリンの妙技に釘づけの人など、思い思いに演奏を味わっている様子でした。
「本当に贅沢よねえ…」「今日は来てよかったぁ」と誰かが言いました。本当にそうですね。演奏家のみなさん、どうもありがとうございます。

後半はゆっくりお茶を飲みながら、今年度を振り返り、ひとりひとりに一言ずつお話ししていただきました。

「追悼式では全身の力が抜けるぐらい緊張して“もうだめだ”と思ったんです。でも、歌い始めたら他の人の声に励まされて、自分の声も意外なほど出るようになりました」

「歌うことで自分が元気になれたので、自分の住んでる復興公営住宅で歌う会を始めました」

「みなさん年齢はいろいろだと思いますが、歌っているときはみんな同級生ですよ」

「震災後、心身ともに具合が悪くて人に会うこともできなくなっていたのですが、今はこうしてみなさんと一緒に歌えるようになって、本当にしあわせ」

「復興公営住宅に越して遠くなったのですが、電車を乗り継いでここに来るのが月に一度の楽しみです」

「私のまわりにたくさん亡くなった人がいて、追悼式ではその人たちのことを思いながら歌いました。そうしたら、“ちゃんと聴こえたよ”と応えてくれたような気がしました」

津波で息子や夫を亡くしたこと、地震が起こった時のこと、自分がどうやって助かったか・・・そんなことを問わず語りに話し始める人が何人もいました。それはその人が心を開いている証拠なのだろうと思われました。
他のメンバーは涙を流しながらその話を聴いています。
「本当につらかったね」「いろんなことがあったね」と、言外の思いのやりとりがそこにはありました。つらい経験を言葉にして誰かに話してみることは、立ち直るために必要なプロセスなのかもしれません。
メンバーそれぞれの言葉から「合唱団の仲間がいる」ということが一人ひとりの大事な宝物になっていたことが伝わってきました。

DSC_0705会の最後に全員で『四季の歌』をうたって、お開きとなりました。
「じゃあ、また来月ね」「これからもよろしくお願いします」

とある仮設住宅の集会所から始まった合唱団の試みですが、小さくてもたしかに花を咲かせていることを確信した今日です。これからもみんなで歌っていきましょう。新年度も引き続きよろしくお願いいたします。