お知らせ
駅なかメモリアルコンサートvol.2開催しました
- 2016.6.11
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音楽の力による復興センター・東北では今年度、毎月11日に地下鉄東西線の
国際センター駅と荒井駅を会場にした「駅なかメモリアルコンサート」を企画制作しています。
東日本大震災から5年が経過した今だからこそ、市民のみなさんとともに、
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考えました。
(主催=仙台市/共催=せんだい3.11メモリアル交流館/協力=仙台市交通局)朝から気温がぐんぐん上がり青空がまぶしい夏日となった本日、駅なかメモリアルコンサートの第2回を開催しました。
会場は地下鉄東西線の東の終点荒井駅にあるせんだい3.11メモリアル交流館。ここは東日本大震災と地域に関する資料アーカイヴ施設として今年の春にオープンしたばかりです。
目の前には広大な空き地が広がり、今後めきめきと住宅が建てられてゆくことが想像されます。空き地の向こうには震災公営住宅の荒井東市営住宅が大きくそびえているのが見えました。
会場の準備をしているときに、2人組のご婦人がやって来て図書コーナーに足を留めました。「あら、あったわ!」と指差す先には、宮城野区中野の地域の歴史を記した本がありました。「実は、作者なんです」というその方はかつて中野小学校の先生をしていたそうで、数十年前にこの本を記したそうです。「あのときは何気なく書いたんだけど、今となっては貴重な資料になってしまったわ」とおっしゃいました。中野小学校は津波で大きな被害を受け、2013年春に校舎は取り壊され、今年の3月にはついに閉校となりました。跡地には慰霊碑が建立され、この夏に除幕式が予定されています。市内にある小学校の中でも古い歴史を持っていた学校がまさかこんな形で幕を下ろすことになるとは、とその方は淋しそうに言いました。
さて、今日も開演のだいぶ前からお客さんがやって来ました。地下鉄が止まるたびに人が増え、開演するころには立見のお客さんで会場がいっぱいになりました。
本日の出演はソプラノ勝又久美子さん、フルート渡邉珠希さん、ピアノ門脇麻美さん。よく復興コンサートや文化庁芸術家派遣事業でご協力いただいている演奏家です。
オープニングは『翼をください』でした。フルートとピアノの音色と歌声が良く響いて、お客さんはすぐに惹きこまれていた様子でした。歌が終わった瞬間に「おおぅ」と、何か声ともため息ともつかないどよめきが湧きました。
『365日の紙飛行機』『ハナミズキ』などお年寄りにもおなじみの曲が続きます。「この5年、みなさんそれぞれに精一杯日々を送られて来たことと思います。これから小さな幸せを一日一日積み重ねていけますように、とこの曲に願いを込めました」と渡邉さんが語りました。
オペラアリアや日本歌曲、ポップスやクラシックなどさまざまな曲が、アンサンブルとソロを取り混ぜて演奏されました。ときどき地下鉄の音が頭上からごうごうと聞こえるのですが、お客さんは演奏に集中してじいっと聴き入っています。
時おり、演奏家のトークにどっと笑いが起きて、ほのぼのと温かな雰囲気のコンサートになりました。
ふと、渡邊さんがドラムとホイッスルを取り出しました。
「ここで、みなさんのお手を拝借します」と言って、サンバのリズムを練習し始めました。シンコペーションや三連符などラテンのノリはなかなか難しいですね。でもその難しさがちょっとした脳トレになるようでお年寄りの方も「あらら」「あはは」と愉快そうに挑戦していました。そして『風になりたい』で共演し、会場中が跳ねるような賑やかさと明るさに包まれました。今日の青空と海風にぴったりです。ああ、夏はもうすぐなんですね。
1時間近く立見だったにもかかわらず、実に多くのお客さんが最後まで楽しんでくださり、熱烈な拍手に異例のダブルアンコールとなりました。
「みなさんに明るい気分で帰っていただきたいので…」とミュージカル曲の『踊り明かそう』が演奏されました。朗々と響き渡る楽器の音色と歌声はみなさんの気持ちを空へ運んでいくようでした。沸き上がる大喝采の中でコンサートは終演となりました。
ご来場の皆さんには多少ご不便をおかけしましたが、しかし、震災の記憶を未来へ伝えてゆくという明確な目的を持ったこの場所でメモリアルコンサートを行なうことは大きな意義があると私たちは考えています。これからも音楽ができることを探し続けていきたいと思います。