お知らせ
泉中央南「歌声サロン」_8月
- 2016.8.23
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仙台市泉区の復興公営住宅で2015年10月から「歌声サロン」を始めました。
復興センターでは音楽家をコーディネートし、泉中央南町内会と
泉区まちづくり推進課と仙台白百合女子大学と協働でサロンを運営しています。昨夜の台風で今日はどうなることかと危ぶんでおりましたが、大きな被害もなく過ぎ去った様子でほっとしました。蒸し暑い中、今日も町内会の方々が会場の支度を整えて待っていてくださいました。どうもありがとうございます。
いつものように音楽リーダーを務めるのはメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さん。楽器のセッティングに取り掛かるお二人がまず取り出したのはひまわりの花でした。毎回いろいろな小道具を持ち込んで工夫を凝らした演出を見せてくださいます。
参加するみなさんには耳だけでなく、目でも楽しんでいただきたいという気持ちが表れていますね。ピアノや譜面台にもひまわりをあしらって、会場の雰囲気がぱあっと明るくなりました。
開始5分前になると、常連さんたちがわらわらとやってきて賑やかになります。「あら、どうもね」「元気にしてた?」と世間話が聞こえてきます。社会福祉協議会のスタッフも住民に声を掛け、何か問題はないか尋ねています。この場でお互いの様子を確かめ合えるとなにかと安心ですよね。およそ30名の参加者が集まりました。
まずは恒例のウォーミングアップから。首や肩などをゆっくりと回して、顔の筋肉も咽喉の中も伸ばして歌に備えます。あちこちから「いててて…」「うはぁぁぁ…」と声やらため息やら聞こえます。月に一度でもいいから、こういうふうに自分の身体を意識する時間を持つのは良いことだと思います。今日の歌は『シャボン玉』『浜辺の歌』『さとうきび畑』の3曲です。いつも最初に後藤さんが見本として1番を歌い、みなさんに聞いていただくのですが、今日はなんだか待ちきれないようですぐに一緒に歌う方が多かったようです。お気に入りの歌なのかもしれませんね。
とくに『浜辺の歌』は歌声がいっそう大きく聞こえました。遠い海辺の町からここへ移り住んできた方もいらっしゃることでしょう。この歌を通して、それぞれの胸の中にあるはずの昔の穏やかな浜辺の風景に心を遊ばせていただけたら、と思いました。
また、『シャボン玉』も『さとうきび畑』も失われた命への想いがこめられた歌です。お盆と敗戦記念日があるこの8月という時季には特別心に染みるものがあります。
『さとうきび畑』の中に「この悲しみは消えない」という歌詞がありますが、震災で消えない悲しみを抱えている人もいらっしゃるかと思います。悲しみを抱えつつ生きてゆく人びとに時折そっと寄り添ってくれる歌があることを願います。「ざわわ…」の歌声に合わせるかのように、窓の外の野原では草が風に揺れています。やがて大粒の雨が降り出しました。
では、このへんで一服しましょう。いつもお茶の支度を担当する仙台白百合女子大学の学生さんが今日はお休みということで、参加者はちょっともの足りない様子でしたが…(ペットボトルのお茶でスミマセン)。
しかし、ティータイムのミニコンサートのために後藤さんがパンチのある選曲をしてきたので、会場は一気に盛り上がりましたよ。
なつかしの昭和歌謡から伊藤咲子『ひまわり娘』、美空ひばり『真っ赤な太陽』、そして太田裕美『木綿のハンカチーフ』です。さわやかアイドル系も、ひばりのグルーヴ感も歌いこなす後藤さんに、ピアノの田村さんも曲に合わせて音色を変えて応じます。
全身揺らして手拍子する人あり、全曲とも歌う人あり、傍で見ていて「うわぁ元気だなあ」と感心しました。80歳を超えた或るご婦人は指揮していたほどです。
中でも『木綿のハンカチーフ』に大きく反応する男性がいて、若かりし頃はもしや太田裕美のファンだったのではないかしらん、と意外な一面を見たような気がしました。会が終わって、後藤さんと田村さんはお見送りに出ます。「ありがとうね」「楽しかったぁ」…交わされる短い言葉と満面の笑顔。それに演奏家は励まされ、勇気をもらうのです。次回もまたご一緒に愉しみましょう。よろしくお願いします。