お知らせ
雄心苑「秋のコスモスコンサート」へ
- 2016.9.10
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残暑と言えど、だんだんと暑さがまろやかになってきました。晴天の雄勝湾は、碧色の水面に陽光がきらめいて宝石をまき散らしたようです。
今日は石巻市雄勝町にある特別養護老人ホーム雄心苑の敬老会に復興コンサートをお届けに行きました。昨年は前日の大雨と土砂崩れで開催が危ぶまれましたが、今年はうららかな天気に恵まれた美しい日となりました。名付けて「秋のコスモスコンサート」、出演はソプラノ齋藤翠さん、ヴァイオリン浅野裕里香さん、ピアノ掛田瑶子さんのトリオです。施設利用者とそのご家族、来賓など、およそ100名が集まって会場はいっぱいになりました。最高齢は明治生まれの106歳だそうです。利用者の方々のほとんどが車椅子で、その脇に介護スタッフがスタンバイしています。
オープニングはソプラノ独唱で童謡『青い眼の人形』変奏曲です。歌が始まったとたん、多くの人たちの口元が動きはじめ、一緒に歌を口ずさんでいました。歌がお好きな様子ですね。
『赤とんぼ』『浜辺の歌』などなつかしい日本のうたと、『愛の挨拶』『G線上のアリア』など親しみやすいクラシックの名曲を中心としたプログラムでコンサートは進みます。
一見反応がなさそうな方も、よくよく見ると、手や足の先で小さく拍子を取っていたり、体を揺らしている様子が見られました。演奏をじいっと見つめている人もいました。
コンサートの後半には掛田さんのピアノ独奏によるリスト『献呈』、浅野さんによるモンティ『チャルダッシュ』、そして翠さんによるガーシュウィン『I Got Rhythm』など、ドラマティックでダイナミックな活きのいいナンバーが並び、その都度、わっと大きな拍手が沸きました。
たとえ知らない曲だったとしても、生の演奏ならではの振動や演奏家の思いが聴いている人の体に伝わって何かしらの良い刺激になれば、と思います。「歌は世につれ」と言いますが、きっと誰しもがその人ならではの音楽史を持っているはずです。戦前、戦後、そして平成の世を生きてきた彼らの胸の中にある音楽史に少しでもアクセスできたらいいなあと思いました。
最後にプッチーニのオペラアリア『誰も寝てはならぬ』が演奏され、3人の奏でる音楽が会場全体に満ち、響き渡りました。それに圧倒されたかのようなため息と喝采が起こり、今日の青空のような、何か晴れ晴れとした空気が残りました。
来賓の方から「(地理的および年齢的な問題で)普段コンサートに行くようなことがないだけに、今日は聴けて本当に良かった」との声をいただきました。あるスタッフさんは「仕事の大変さを忘れるほどでした」と言いました。楽しんでいただけたようで私たちもうれしいです。どうぞみなさんお元気にお過ごしくださいね。