お知らせ
泉中央南「歌声サロン」_9月
- 2016.9.20
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仙台市泉区の復興公営住宅で2015年10月から「歌声サロン」を始めました。
復興センターでは音楽家をコーディネートし、泉中央南町内会と
泉区まちづくり推進課と仙台白百合女子大学と協働でサロンを運営しています。秋の長雨が続く今日このごろ、どんよりと灰色の厚い雲が垂れこめていますが、歌声サロンは元気に行きますよ!
このサロンで音楽リーダーを務めるメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さんは「今日はこれがいいかなあと思って」と造花のコスモスやいが栗など秋らしいデコレーションの数々と、本物のすすきの束を持って現れました。十五夜の名残をみんなで一緒に楽しもうという趣向ですね。
花瓶に生けたすすきと色とりどりの飾りつけが雨に洗われた屋外の緑を借景に、なかなかに佳い景色となりました。
常連さんがやって来て「あらぁすすき、綺麗だことぉ」「ほんとねぇ」と感嘆の声を上げました。後藤さんは「今日のメインゲストはすすきです!」とみんなを笑わせました。まずはウォーミングアップから。立つ人、椅子に掛ける人、それぞれマイペースにおこないます。発声練習で横隔膜を意識した深い呼吸をすると、今日の肌寒さにもかかわらず「わ、暑くなった!」と汗を拭う方がいました。効果てきめん、一気に代謝が良くなったようですね。
本日の課題曲の最初は『十五夜お月さん』。本居長世による嫋嫋としたメロディが子守歌のようで、歌っている本人が落ち着く感じがしました。また、野口雨情による郷愁あふれる歌詞をしみじみと味わっている様子が伝わってきました。
続く『しょうじょう寺の狸ばやし』はよくご存じの通り、弾むような楽しい歌です。自然に体が左右に振れて、手拍子や足拍子のパタパタという音があちこちから聞こえてきました。「童心に帰って」という言い回しがぴったりな様子で、みなさん楽しそうに歌っていました。後藤さんは「三番のメロディがちょっと違っているので気をつけましょう」とアドバイス。童謡と言えど作曲家のちょっとしたひねりがあるんですね。それもまた好し、です。
『知床旅情』はみなさんお好きなようで、ゆったりと三拍子に身をまかせ、のびのび朗々と歌っていました。特に男性が好む歌なのでしょうか、ことのほか男声が力強く響いて、ユニゾンながら素朴なハーモニーとなって会場に満ちてゆきます。歌えば歌うほどにエネルギーが増してゆく感じがしました。参加者も演奏家も全員でセッションしているような不思議な熱気が生まれて、傍で聞いていてちょっと感動するほどでした。参加者から「もう一回歌いたいな」との要望が出るほど、みなさんの中にも達成感があったのかもしれませんね。
ちょっと一服のティータイムには、後藤さんと田村さんが由紀さおり『手紙』と井上陽水『少年時代』を演奏を披露しました。これまでいただいていたリクエストに応えた選曲です。一緒に口ずさむ方、目を閉じてじいっと聴き入る方などの姿がありました。贅沢なひとときですね。
後藤さんの歌声に田村さんのコーラスが加わって、たった2人でも3人分以上の豊かな演奏に聞こえます。人の声が重なると、なんと温かなことでしょう。
アンコールは『涙そうそう』です。
「晴れ渡る日も、雨の日も、浮かぶあの笑顔」という歌詞がしとしと雨の今日にぴったりです。そう言えば秋のお彼岸でした。今は遠くなってしまった誰かの笑顔を思い出して聴いている人もいらしたかもしれません。時空を超えて誰かと対話する時間を持つこと、それも音楽の力の一つなのでしょう。
終演後のお見送りでは、ある方が「私は歌はうまくないですが、だんだんと声が出るようになってきましたよ」と言いました。これからも歌声サロンで歌うことを楽しんでいただければさいわいです。それではまた来月お会いしましょう!