お知らせ
駅なか復興コンサートinせんくら②
- 2016.10.2
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〈楽都〉仙台が誇るクラシック音楽の祭典「仙台クラシックフェスティバル」は今年で11年目を迎えます。
音楽の力による復興センター・東北では、この機会にあわせ、
日頃の復興コンサート活動ご参加いただいている演奏家と被災地域の若者による
「駅なか復興コンサートinせんくら」を企画しました。
会場は仙台市地下鉄東西線の荒井駅に隣接するせんだい3.11メモリアル交流館です。せんくら2016最終日の今日は「うたごえの響き」と題し、高校生の合唱と声楽家の独唱をお届けしました。出演は宮城県石巻好文館高等学校音楽部24名と宮城県塩釜高等学校合唱部9名、そしてソプラノ千石史子さんとピアノ千葉祥子さんです。
千石さんはこの日のために事前に好文館高校と塩釜高校を訪れて合唱指導をして来ました。今日はその成果を披露する晴れの舞台、生徒たちも千石さんも、そして顧問の先生方もちょっとドキドキしている様子でした。千石さんは「頬を上げて!」「お客さんを声で包み込むように!」と最終リハーサルでも盛んにアドバイスをし、生徒はそのつど「はいっ!」と元気に返事をしていました。
会場にはベビーカーを携えたカップルや十代の女の子たち、そしてお年寄りまで幅広い年齢層のお客さんが集まりました。話によると、各校の生徒や卒業生がわざわざ聴きに来ていたそうです。ありがたいですね。
まずは好文館高校の女声合唱で幕開けです。『夢の意味』『赤いスイートピー』を歌いました。柔らかで透き通るような声が響いてなかなか良い感じです。
続く混声合唱では『一詩人の最後の歌』『I LOVE YOU』を披露、男声が入るとまたちがう趣で、若々しい力に満ちたハーモニーを聞かせてくれました。
伴奏者の藤井朋美さんは復興コンサートにもしばしばご参加いただいているピアニストですが、実は好文館高校の卒業生。音楽を通じて母校の後輩たちとの交流を続いているのは素敵なことですね。塩釜高校はイントロに乗って軽快に登場、なかなかの演出ですね。これまでは女声メンバーしかいなかったところへ今年度は2名の男子が加わり、混声合唱団として新たな挑戦を始めたそうです。『365日の紙飛行機』『明日への扉』、そして地元生まれの震災復興ソング『わせねでや』を歌いました。
「わせねでや」とは宮城の言葉で「忘れないで」という意味です。塩竈の浦戸諸島を渡る海風のような、明るく爽やかなハーモニーを聞かせてくれました。千石史子さんと千葉祥子さんは大学の同級生とのことで、息の合った演奏と朗らかなトークでお客さんを魅了しました。
まずグノー『アヴェ・マリア』、フォーレ『ピエ・イエズ』と祈りの曲が歌われ、そして千石さんは震災当初の思い出を語りました。
「音楽は誰かの空腹を満たすこともできないし、家を建ててあげることもできない、何の役にも立たないと途方にくれました。でも、1週間ぐらいしたころ、ある避難所で歌ってほしいとのお話をいただいて歌いに行きました。すると、みなさん聴いてくださって、《歌ってくれてどうもありがとう》と、とても喜んでくださったんです。そのとき《ああ、音楽にもできることがあるんだ》と思って、それから音楽の力を多くの人と分かち合いたいと願って活動しています」
その言葉に多くのお客さんがしみじみとうなづいていました。
後半は『からたちの花』などの懐かしい日本歌曲と、千石さんの恩師でもある作曲家あかにしあかねさんの作品が披露されました。
最後に「みなさんの毎日が穏やかでありますように…」と『アメイジング・グレース』を歌いました。最後の音が空中に消え入るのをお客さんはじっと聴いていて、その後大きな喝采を贈っていました。
さて、アンコールは全員出演による『花は咲く』の演奏です。35名を超える人が並ぶとかなり壮観な光景となりました。みんなの声が一つになって会場全体に響き、お客さんを包み込んでいきます。一緒に歌っている観客の姿もありました。小さな会場なので、演奏者も観客も互いによく顔が見えます。歌を通して双方が生き生きとした時間を共有していることがよくわかります。歌が誰かのこころに届いていることが高校生たちにもきっと実感されたのではないでしょうか。
この歌の歌詞に「誰かの未来が見える 悲しみの向こう側に」とありますが、あの厄災を経験したこの若者たちの未来が平和なものでありますようにと、歌う姿を見ながら願わずにはいられませんでした。と、同時に、そういう未来を創っていくのは他でもない彼ら自身なのだと期待をしています。ぜひそれぞれの花を咲かせてくださいね。みなさんどうもありがとうございました!