お知らせ
駅なかメモリアルコンサートvol.7開催しました
- 2016.11.11
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音楽の力による復興センター・東北では今年度、毎月11日に地下鉄東西線の
国際センター駅と荒井駅を会場にした「駅なかメモリアルコンサート」を企画制作しています。
東日本大震災から5年が経過した今だからこそ、市民のみなさんとともに、
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考えました。
(主催=仙台市)例年になく早い初雪の便りも聞かれる霜月です。灰色の冷たい雨が降る中、およそ70名の来場者がありました。今日の駅なかメモリアルコンサートの出演はソプラノ沓澤裕恵さん、ヴァイオリン駒込綾さん、ギター小関佳宏さんのトリオです。復興コンサートへの登場も多いお三方で、つい2週間前にも気仙沼へご一緒していただいたばかりです。
オープニングは映画『マイ・フェア・レディ』から『踊り明かそう』でした。演奏が終わった途端、あるお客さんからさっそく「ブラボー!」の掛け声が飛び出し、演奏家もほっと笑顔になりました。
進行を担当するのは駒込さん。復興コンサートでのエピソードや曲の紹介を交えながらの楽しいトークで、お客さんをぐいぐいと惹き付けます。
そのおかげで外国語のオペラ曲も親しみやすく聴いていただけた様子でした。コンサートの前半では、例えばシュトラウス2世『侯爵様、貴方のような御方は』、ヘンデル『オンブラ・マイ・フ』など、声楽の魅力をたっぷりとお楽しみいただきました。「ワンダフル!」の声も掛かって大きな拍手が沸きました。
さて、小関さんは編曲者としても定評ある気鋭のアーティストです。ヴァイオリンとギターの二重奏で懐かしの映画音楽『太陽がいっぱい』が始まったかと思うと、いつしかそれは『スパイ大作戦』『リベルタンゴ』『テイク5』等々に変わっていく万華鏡のようなアレンジの作品でした。知っている曲が顔を出すと、お客さんがうなづいたり、にやりとしたり、感心したり。とても面白がっていました。
ここで、駒込さんが気仙沼での或るエピソードを紹介しました。数年前、或るお宅に伺って復興コンサートを終え、お茶のみ話をしていたときに、古びた蓄音機を見つけました。そのお宅のおばあさまが若い頃に使っていたものだそうです。戦時中にこっそりと聴いていた思い出の曲がアイルランド民謡『庭の千草』なのだそうです。駒込さんと小関さんは一度片づけた楽器を取り出して、その場でその曲を演奏しました。たまたま小関さんが楽譜を持っていたからです。おばあさまはたいそう喜びました。
そして先月、同じお宅に再訪することが叶い、今度はギターと歌で『庭の千草』を演奏し、音楽を通じた再会の喜びを分かち合ったのでした。そして今日もその歌とギターによる『庭の千草』が披露され、お客さんはしみじみと聴き入っていました。
プログラムの最後は、元気よく『リンゴの唄』で締めです。「ご存じの方はどうぞ歌ってください!」と駒込さんが誘うと、特に男性のお客さんが大きな声で歌っていました。演奏家もいっそう楽しそうです。戦後の人びとに希望を与えたこの歌に、駒込さんたちの思いは象徴されているように感じました。
名残惜しむ大きな拍手の中で今日のコンサートは終演となりました。
常連とおぼしきお客さんから「また来月も行くからね」「いつもありがとう」とのお声を頂戴しました。どうもありがとうございます。そして、この雨の中を駆けつけてくださったみなさんに感謝申し上げます。