お知らせ

泉中央南「歌声サロン」_11月

2016.11.29

仙台市泉区の復興公営住宅で2015年10月から「歌声サロン」を始めました。
復興センターでは音楽家をコーディネートし、泉中央南町内会と
泉区まちづくり推進課と協働してサロンを運営しています。

dscn23932年目を迎えた歌声サロン、今日はいつにも増して参加者が多く、こちらにお住まいの方、地域の人びと、お隣りの老人介護施設利用者など合わせて30名が集まりました。みなさんの体温とこの会を楽しみにしているわくわくした気持ちのおかげで会場の中が温かくなったように思われました。
今日も音楽リーダーはメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さんです。dscn2418
まずは恒例のストレッチから。毎日の寒さで凝り固まっている身体をゆっくりとほぐしていきます。この人数で一斉に腕を上げると壮観ですねえ。肩や首をじっくり回すと、「うわぁ、ゴリゴリ言ってる~」と苦笑する人がいました。ちょっとした運動でもやってみると血の巡りが良くなり、気分が晴れ晴れとしてくるのがわかります。こういうことも毎日の生活に取り入れていただけたらいいなあと思います。
dscn2399 今日は唱歌の『夕焼小焼』から始めました。みなさんよくご存じの歌なので、最初から声が良く出ています。しばしば遠慮がちな男性方もこれは朗々と歌っていて、その姿に「ああ体に染み込んでいる歌なんだなあ」と思いました。
田村さんがこの歌の前奏にお寺の鐘の音のようなアレンジと、後奏に星のきらめきを思わせるアレンジを入れてくださって、気分が盛り上がると言いましょうか、歌の情景がさらに喚起されます。dscn2402
この歌もそうですが、日本の唱歌は音が高いものがよくあります。後藤さんは「高い音を出すときは、びっくりした顔で歌うと出るんですよ」とコツを披露しました。目も耳も鼻も全開するその劇的な表情にみなさんは「あははは」と大笑い。
笑いながらも真似してみると、高い声がさっきよりすうっと伸びやかに聞こえてきました。田村さんも「みなさん、声が変わりましたよ!すごい!」と驚いていました。
dscn2407続く『紅葉』もおなじみの歌ですから、みなさんのびのびと歌っていました。その歌声に後藤さんがハーモニーをつけて、即席の二部合唱となりました。歌声を合わせると不思議な楽しさがありますね。今日も演奏家のお二人が持参した紅葉や柿の実のデコレーションが目に鮮やか、歌と相俟って一幅の秋の風景が広がりました。
3曲目はがらりと雰囲気を変えて、ポップス『太陽がくれた季節』に挑戦です。昭和40年代の大ヒット曲ですが、「この歌はご存じですか?」と演奏家が問うと、手を挙げたのはほんの数名の方だけ。でも、いざ歌い出したら「ああ、この歌ね!」と、どの方もすんなり歌えていました。

dscn2442お茶を一服しながらのミニコンサートでは、以前リクエストのあった『ブルーシャトー』が演奏されました。後藤さんが手拍子を促すと、きちんと裏拍でリズムを取って(しかもアレンジ入り!)、ライヴ会場のような盛り上がりになりました。dscn2443
この裏拍というのが曲者で、ご高齢の人が多いところだとどうしても表打ちの、民謡調の手拍子になりがちなのです。しかし、今日は見事に裏拍で、いわゆる“ノリ”が生まれています。「すばらしいですっ!」と演奏家も大感激していました。双方でともに音楽を作っていることを目の当たりにできた一場面でした。
dscn2458アンコールでは、後藤さんが子供の頃から好きだという『わたしの紙風船』という歌が披露されました。自分の気持ちを紙風船になぞらえて、時にへこんだりひしゃげたりするけれど、息を吹き込めばまたまんまるく元気になれるよ、というささやかな励ましの歌です。
語りかけるようなやさしい歌声に乗せて温かな言葉がみなさんの心に染みていくように思われました。dscn2455
歌の最後に、後藤さんが紙風船を握りしめてぺしゃんこにしてしまいました。見ていた人たちが「はっ」と思った瞬間に、後藤さんがふっと息を吹き込むと、風船はまた瞬時にぱっとまん丸く膨らみ、客席からは「わぁっ!」と安堵の歓声が上がりました。
その光景を見て思いました、音楽をはじめとする芸術の役割とはまさに紙風船を膨らませることに似ているなあ、と。
芸術は人の魂に新しい息吹を吹き込んで、心に再び張りを与え、生き生きとしたものにしてくれます。
dscn2466「ああ今日もたのしかった」「また来月ね」と笑顔で帰ってゆくみなさんの様子からも、そのことを確信した秋の午後でした。