お知らせ
若林西「花いっぱいありがとう!コンサート」へ
- 2016.12.6
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しばらく前に、仙台市若林区の若林西復興公営住宅の自治会「せせらぎ会」から相談がありました。
「ご近所の若林小学校の子供たちが毎年この住宅に来て、プランターに花を植えてくれるのです。その御礼にコンサートをプレゼントしてあげたいのですが、どうでしょう?」
はい、よろこんで!二つ返事で引き受けました。
せせらぎ会と復興センターと若林小学校、そして若林市民センターとの協働で「花いっぱいありがとう!コンサート」の企画が立ち上がりました。
出演は山形からソプラノ沓澤裕恵さんとヴァイオリン駒込綾さん、仙台からギター小関佳宏さんのトリオです。黒板に貼られたかわいいタイトルは市民センター長の手づくりです。どうもありがとうございます。
会場となる音楽室は校舎の3階にあり、窓からは広瀬川が一望できます。
今朝の時雨のおかげで市街地上空に架かる大きな虹が見えました。演奏家たちもリハーサルの手を留めて「わぁ~すごい!」と見とれていました。
さて、いよいよ開演です。4年生児童と若林西復興公営住宅にお住まいの方々が集まって会場の気温がちょっと上がったような気がしました。
オープニングはロッシーニ『アルプスの羊飼いの娘』です。進行を担当する駒込さんのわかりやすい解説で、子供たちは曲のイメージを想像しながら聞けたのではないでしょうか。沓澤さんの高い声に驚いて、あちこちで「あ~」「は~」と歌を真似する子たちがいました。
続くヘンデル『オンブラ・マイ・フ』のときに駒込さんが「バッハは“音楽の父”と呼ばれます。ヘンデルは男だけど“音楽の母”と言われています」と言うと、子供たちは「えーなんでー?」「男なのに~?」と素直な反応を示しつつ、演奏に聴き入っていました。やんちゃな子もいますが、熱いまなざしでみじろぎもせず演奏を聴く子もいて、演奏家たちも「ちゃんと反応があって演奏のし甲斐があった」と後で話していました。
駒込さんのトークはときどき山形弁が交じって気さくで面白く、子供たちの心をがっちりキャッチしていた様子で、おとなも大爆笑でした。
楽器紹介で「ギターは弦をはじく撥弦(はつげん)楽器、ヴァイオリンは弦をこするので擦弦(さつげん)楽器と言います」と説明すると、またあちこちで「さつー」「さつ!」「さつ!」と真似していました。ひとつ新しい知識が増えたかな?
ギターソロで演奏された『花は咲く』では、子供たちは小関さんの指づかいをじっと見つめていました。音楽室がしん、と静まってギターの温かく優しい調べが子供たちを包むようでした。
最後に子供たちは演奏家とせせらぎ会のみなさんへのお礼に、学習発表会で歌った曲を披露してくれました。元気いっぱいの歌声に大人たちはにこにこ笑顔になっていました。
終演後、せせらぎ会代表の大場留理子さんが子供たちに挨拶しました。
「今日、演奏した方たちは血のにじむような努力をしてきた人たちです。継続は力なりという言葉があります。みんなも“何かしたい”とか“強くなりたい”とか思ったら、一所懸命に続けてくださいね。おばちゃんはみんなにそのことを伝えたくて演奏会をプレゼントしました」
人生の大先輩からの言葉は子供たちの心にどう響いたでしょうか。いつか今日のことを思い出してくれたなら私たちもうれしいです。
せせらぎ会のみなさんがつくるアーチをくぐり抜けて子供たちは教室へと帰っていきました。大人に見守られる子供たち、という地域コミュニティのあり方を象徴するような光景でした。
被災した人々が新しい土地へ移り、新たなコミュニティを築くことはそう容易ではありません。しかし、ここではすでに学校と地域相互の豊かな関係がつくられているのだなあと感心した一日でした。