お知らせ
川の上・百俵館「カワノカミ音楽会Vol.5」へ
- 2016.12.17
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石巻市川の上地区は防災集団移転地として宅地造成工事が続いています。かつての水田地帯はどんどん土盛りが進み、季節に一度訪れるたびに風景が変化しています。やがて来るであろう新しい住民と、もともとの地域住民、そして至近にあるプレハブ応急仮設住宅にお住まいの方々の交流拠点となるべくさまざまな活動を展開しているのが川の上・百俵館です。
復興センターでは季節に一度、復興コンサートをお届けしています。名付けて「カワノカミ音楽会」。その第5回は親子で楽しめるクリスマスコンサートを行ないました。
出演はマリンバとパーカッションのデュオ、桜二重奏(熊谷昇子さん、誉田広耶さん)です。これまでしばしば文化庁芸術家派遣事業でお世話になっている演奏家です。
まずは楽器の組み立てから始まりました。ちょっとした引っ越しぐらいの物量と言ったら大袈裟ですが、たくさんの部品と打楽器類を運び込むだけでひと仕事でした。組みあがったマリンバは軽自動車くらいの存在感があって、初めてマリンバを間近に見る人たちは「うわ~大きいんだねえ」と感心していました。
冬至前のこの時季はあっという間に日が暮れます。夕闇の中を三々五々連れ立ってやって来るお客さんを新品の薪ストーブが温かく迎えます。凍えた手をゆらめく炎に差し伸べて「はぁぁ、あったかいねえ」とひと息ついていました。寒い時には火がごちそうですね。今日は特別にホットワインとホットココアが提供されていて、ゆっくりとグラスを傾けながら聴く人の姿がありました。
コンサートはハチャトゥリアン『剣の舞』で幕開けです。一陣の風のような二人の激しいマレットさばきにお客さんは「わぁ…」と見とれていました。
プログラムはディズニー曲やジャズ、ボサノヴァ、クリスマスソングと幕の内弁当みたいに(?)色とりどりの楽しい曲が目白押しで、
赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまでリズムに体を揺らしたり、手拍子したり、と楽しんでいる様子。おなじみの曲が熊谷さんの編曲によってさらに聞きやすい素敵な作品になっていました。0歳児も小学生も飽きずに聴いていられるのは打楽器が身体に働きかける根源的なパワーがあるからでしょうか。ニコニコする子供の様子を大人たちが目を細めて見守っていました。
誉田さんの、初々しくちょっととぼけた感じのトークがさらにお客さんを和ませて、薪ストーブの暖かさに加え、終始ほのぼのとした空気が会場に満ちていました。
最後は、復興センタースタッフも総動員したハンドベル共演でハラハラドキドキの冷や汗が流れそうな『きよしこの夜』を演奏した後に、改めて熊谷さんと誉田さんがマリンバでしっとりと演奏しました。
心も体も温まるような、すてきなひとときです。年の瀬の気ぜわしさも寒さも忘れて、ここにはゆったりとした特別な時間が流れていました。演奏後は「そばで見てもいいですか?」「ちょっと触ってもいい?」と楽器に興味津々の方々が集まってきました。マリンバの大きさや音板の重さ、パーカッション楽器のバリエーションに驚いたり感心したり。飲み物の容器を再利用した手づくり楽器も混ざっていたので、「あ、なるほど!」と身近に感じていただけたようです。工夫次第でまた新しい楽器が出来そうですね。
別れ際に小さい子たちはちょっと照れながら演奏家と握手したりハイタッチしていました。「今度、ジャズ聞きたいわ!」とリクエストする方もいました。
撤収のひと仕事が終わったあとには、百俵館スタッフのぶこさんが「どうぞ召し上がって」と、手づくりのすいとんをごちそうしてくださいました。やさしい味わいの熱々のだしが体じゅうにしみわたります。演奏家もスタッフも「はぁぁ~」と大きなため息とともに、ほっと落ち着きました。いつもお気遣いをありがとうございます。ごちそうさまでした!