お知らせ
石巻市営新立野第二住宅へ
- 2016.12.22
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石巻市の蛇田地区では防災集団移転ための大規模な宅地造成が行われ、現在は戸建てや集合住宅など復興公営住宅が立ち並び、合わせて約700世帯が暮らす一大新興住宅地となりました。今後もさらに人口は増え、2年後にはおよそ1,700世帯、3,000人が住む町となる予定だそうです。
今日はその地区にある新立野第二住宅団地会からの依頼で復興コンサートをお届けしました。集会所の周辺はアメリカ西海岸を思わせる瀟洒な街並みです。大型ショッピングモールも至近で便利、住みやすそうな団地ですね。
さて、今日の出演は仙台フィルハーモニー管弦楽団からヴァイオリン大友靖雅さんとチェロ山本純さんです。小雨模様で出足が心配されましたが、会場にはおよそ30名の方が集まりました。集会所にありったけの椅子を準備したのですが、それでも足りなくなってしまい何人かの方には座布団に座っていただくことになりました。
演奏家の提案で、より近い距離感で聴いていただこうと、演奏家を取り囲むように座席を並べてみました。やって来たおばさま方は「あら、なんだや」と恥ずかしがって下がろうとするのですが、山本さんが開演前から顔を出してきさくに話しかけるので、いつの間にか打ち解けた様子で一緒におしゃべりしていました。「私ね、バイオリンとか見るの初めて」「こういうの、聞いたことないね」と、初めての体験にわくわくしている方がいました。
コンサートはメンデルスゾーン『緑の森よ』で幕開けです。ヴァイオリンとチェロのハーモニーが程よく響いて、気持ちの良い会場だなあと思いました。
プログラム前半は耳なじみのあるクラシック曲を演奏しました。エルガー『愛の挨拶』やマスネ『タイスの瞑想曲』など、演奏が終わるたびに「はぁ…」「ほぅ…」と感嘆のため息が聞こえてきました。演奏家の息づかいにお客さんがいつしか同調しているんですね。
チェロ独奏によるドヴォルザーク『家路』では目を閉じて身じろぎもせず聴き入っている方が何人もいました。曲の余韻を搔き消してしまうのをためらうように、拍手がそうっと静かに始まりました。楽器紹介のときには「木材は何なのすか?」
「チェロとバイオリンは素材は一緒なの?」などの質問が出て興味深そうでした。 「それは1億円ぐらいするのすか?」との質問には演奏家が「いえいえ、とんでもない」と苦笑していました。その後は懐かしい日本の唱歌をいくつか演奏しました。「唱歌には良い歌がたくさんありますが、いま学校ではもう教えていないそうです。お孫さんや地域の子供たちにどうか歌い継いでいってほしいと思います」と山本さんが語ると、みなさん深くうなづいていました。
四季折々の唱歌が次々と演奏されると、多くの方が自然に歌い出します。拍子を取ったり前後に揺れながら歌っている様子は本当に楽しそうでした。
そこには素朴な感動がありました。音を感じて、心が動き、からだも動きだす。音楽を通して人びとの交歓が行なわれています。みなさんで一緒に歌った『夕焼小焼』の大らかな歌声には、この場にともに居あわせることの歓びがあふれているように思われました。演奏後にはみんなでお茶のみ会をしました。実は昨日までオーケストラの仕事で上越市にいらしたという大友さんと山本さんからお土産のお菓子がふるまわれ、住宅のみなさんからは皿に山盛りのお菓子とみかんが供されました。
「心がほっこりしました」「童心に戻りました」「また来てくださいね」と笑顔で話す人たちの様子に演奏家はとてもうれしそうでした。団地会の会長さんからも「ぜひまたお願いしますね」とのお声をいただきました。はい、よろこんで。今後ともよろしくお願いします。完成して数か月のこの集会所が、これから多くの住民に親しまれる生き生きとした場となるといいですね。