お知らせ
駅なかメモリアルコンサートvol.10開催しました
- 2017.2.11
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音楽の力による復興センター・東北では今年度、毎月11日に地下鉄東西線の
国際センター駅と荒井駅を会場にした「駅なかメモリアルコンサート」を企画制作しています。
東日本大震災から5年が経過した今だからこそ、市民のみなさんとともに、
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考えました。
(主催=仙台市)2月とは思われぬほどの晴天に恵まれました。会場の国際センター駅青葉の風テラスにはまばゆい陽光がたっぷり差し込んでいて、温室のようになっています。汗をかきかき準備作業をしていると、「どこから並べばいいのかな?」と尋ねられました。「きょうこそは座れるかなと思ってね」と、熱心なお客さんが早くから並び始めました。恐縮です。
いつものように用意した席はあっという間にいっぱいになり、立見も含めたおよそ250人以上のお客さんが開演を待ち受けていました。
今年度、毎月11日にお送りしてきたメモリアルコンサートの掉尾を飾るのは大場さや佳さん、叶光徳さん、佐藤由紀さん、西峰里美さんによるクラリネット四重奏です。
オープニングはグランドマン『クラリネットのためのカプリス』でした。明るく軽快な調べがぱあっと会場に広がりました。プログラム前半はモーツァルトの『魔笛』やカール『5枚のイギリスの絵葉書』から小品をいくつか演奏しました。
クラリネットならではの柔らかでまろやかな音色が重なって、ほっとさせるような心地よいハーモニーが聴衆を包み込みます。聴いているみなさんがとてもやさしい表情をしているのが印象的でした。
後半は日本の歌やポップスメドレーが披露されました。永井彰『くまさん変奏曲』は9分にもおよび大作で、長野県に伝わるわらべ歌「くまさん」がさまざまに展開してゆく曲です。4本のクラリネットが一緒に遊んだり踊ったりしているような感じがありました。昔話の絵本をめくるように、いろいろな場面が目に浮かんでくるようでした。
唱歌の『早春賦』が演奏されると、客席からささやくような歌声が湧いてきて、女声コーラス隊がいるのかしらんと思うほどでした。春を待ちわびる思いがクラリネットの調べに誘われて顔を出したのかもしれませんね。微かだけれど、雪解け水のような澄んだ歌声に演奏家も嬉しそうでした。プログラムの最後は、おなじみの『花は咲く』です。一緒に歌う人、口を結んで聴くことに集中する人、目頭を押さえる人など、さまざまな様子がありました。今日で5年と11か月。そして、また春がやって来ます。みなさんの胸中にはどのような思いが去来しているのでしょうか。
名残を惜しむような温かい拍手に演奏家は見送られ、コンサートは無事終了しました。
後片付けをするスタッフに「いつもおつかれさんね!「今日も良かったねえ」とお声を掛けてくださる方がいます。メモリアルコンサートの常連さんが増えているみたいです。中には「たまには手伝わせてよ!」と椅子を運んでくださった方もいて、本当にありがたいことだなあと思いました。
コンサートは演奏家とお客さんとが一緒につくるもの、ご来場くださった皆さんに恵まれたコンサートシリーズでした。ご来場くださった皆様、ご出演くださった演奏家の皆様、そのほか関係者の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。どうもありがとうございます。もう6年、まだ6年。あの日との距離感は人それぞれに異なって、思うこと感じることもさまざまです。そのさまざまな人々が音楽を介してともに集うこと、あの日に思いを寄せることの大事さと不思議を感じました。