お知らせ

美田園あい・あいコンサートへ

2017.2.13

名取市サポートセンター「どっと.なとり」は、みなし住宅や在宅被災者等の方々の生活支援を行なう団体です。名取市内・市外に定点サロンや移動サロンを開き、被災者の交流や情報交換を図るほか、昨今では災害公営住宅入居者へのケアも始まっています。
仙台空港アクセス線美田園駅の近くに、防災集団移転の戸建て住宅と集合住宅からなる美田園北町内会ができました。待望の集会所は昨年の11月に完成したばかり。どっと.なとりから「この集会所で人が集う機会をどんどん作りたいので」と復興コンサートのご依頼を受けました。
「美田園あい・あいコンサート」というタイトルにはこの集会所が人びとの出会いの場となり、住民に愛される場所になるように、との願いが込められています。
本日の出演はソプラノ沓澤裕恵さんとクラシックギター小関佳宏さんのデュオです。会場は満員御礼、およそ30名の参加者が集まりました。若い頃ギターをかじったことがある男性は世の中にたくさんいらっしゃるのかもしれませんね、男性参加者がいつになく多いように思われました。
窓からは日差しが差し込み、真っ青な空に白い雲がのんびりと浮かんでいるのが見えます。ひなたぼっこしているようなおだやかな雰囲気でコンサートは始まりました。
まずは今日の青空にぴったりな『オー・ソレ・ミオ』『サンタ・ルチア』が披露され、沓澤さんの澄んだ声が会場いっぱいに広がりました。お客さんはその歌声に「ほ~…」と感心して聴き惚れていました。
小関さんが『禁じられた遊び』を演奏すると、やはり男性のお客さんが手元をじっと見つめていた様子。きっと爪弾いた経験があるのでしょうね。多くの人の青春の一ページを飾る曲なのでしょう。
小関さんが「自分の爪が楽器なんです」と爪の手入れ方法や日常生活での気遣いについて解説しました。
その後、沓澤さんが「私の楽器はのどです」と声の高低の違いや声帯の話をしたところ、あるお客さんがちょっと手を挙げて「声帯は訓練次第で長くなったりするんですか?」と質問しました。こういう気楽な雰囲気は復興コンサートならでは、ですね。
『庭の千草』のときには会場全体がしーんと静まり返って、多くの人が目を閉じてしみじみと聴き入っていたのが印象的でした。
その後はみなさんに『北国の春』『いつでも夢を』を一緒に歌っていただきました。
その様子を見たどっとなとりのスタッフさんが「みんなで歌うってすごく良いですねえ」と言いました。たしかにいきいきした表情になったのが感じられます。
最後に、演奏家に名取市特産のカーネーションの花束と手づくりの紙細工の花がが贈られました。
「これ、オレがつくったんだ」とある男性が少し照れて言いました。
「よかったらまた呼んでくださいね」と復興センタースタッフが言うと、最前列のおじいさんが「すぐまた来てよ」と笑顔を見せました。お気に召した様子で何よりです。
終演後には演奏家も交えてのお茶のみ会がありました。感想を言ってくださったり、何気ない世間話をするうちに「津波でみんな流されてしまったんだ…」「黒い壁が押し寄せてきてさ…」と、当時の体験談が問わず語りに出てきました。演奏家は言葉もなくその話に耳を傾けていました。
まもなく3月、季節がめぐって来るたびに思い出されてしまうことがあります。6年という月日が長いのか短いのかは誰にも決められません。まだまだ音楽がやるべきことがありそうです。