お知らせ

カルテット・フィデスの気仙沼ツアー①

2017.5.8

気仙沼の仮設住宅や復興公営住宅で支援コーディネートをする村上充さん(ムラカミサポート)のご協力で、今月も2日間計4か所の復興コンサートツアーを行ないました。
出演は仙台フィルメンバーによる弦楽四重奏団カルテット・フィデス(ヴァイオリン松山古流さん、ヴァイオリン熊谷洋子さん、ヴィオラ御供和江さん、チェロ石井忠彦さん)です。

まず最初に訪れたのは、大川のほとりに建つ四反田(したんだ)住宅です。2年前の秋に完成したこの住宅には約70世帯が入居し、周辺の100世帯とともに四反田区自治会を形成しています。新しい入居者と地域の方々との交流を活発にしていきたいという自治会の意向があり、そのきっかけとして「新緑のコンサート」をお届けしました。こぢんまりとした集会室には椅子が足りなくなるほどの来場者があり、演奏家も急遽、立奏に切り替えて対応しました。
クライスラー『愛のよろこび』で華やかに幕を開けたあと、テレビドラマ主題歌や演歌、タンゴ、シャンソンなどなど多彩なプログラムが披露されました。
なんとザ・ベンチャーズの『ダイヤモンド・ヘッド』弦楽四重奏版も演奏され、お客さんはリズムを刻んでノリノリで聴いていました。
クラシック音楽家が来るということで最初ちょっと緊張していたような感じがありましたが、進行の御供さんの面白おかしいトークに引き込まれて空気がほぐれてきました。アンコールに応える演奏家に「あら、どうもどうも」と自然に話しかけるおばさま数名がいらして、すっかりなごやかムードでした。

終演後には演奏家も参加してのお茶のみ会がありました。「これ食べてね」「気仙沼のお煮しめだよ」「漬物もどうぞ。今日は紅花入れてみたの」と心のこもったおもてなしいただきました。演奏家も「お煮しめ、おいしい!」とぱくぱく食べていましたよ。
或るおばあちゃんがふと「今日は久しぶりに歌ったよ。何年ぶりだろ」と言いました。その方は津波で息子さんを亡くし、以来歌うなんてことはずっとなかったそうです。「今日は演奏を聴けて本当によかった。楽しかったよ」と頭を下げるその方に掛ける言葉は見つからず演奏家は黙って頷いていました。ほんのひとときでも心安らぐ時間をご一緒できたのなら、私たちもさいわいです。
ところで、住民数に比してかなり手狭なこの集会室に替わり、来年春にはコミュニティセンターが近所に完成するそうです。「センターができたらまた来てくださいね」との要望に演奏家は「はい、きっと!絶対に!」と応えていました。