お知らせ

カルテット・フィデスの気仙沼ツアー④

2017.5.9

気仙沼の仮設住宅や復興公営住宅で支援コーディネートをする村上充さん(ムラカミサポート)のご協力で、今月も2日間の復興コンサートツアーを行ないました。
出演は仙台フィルメンバーによる弦楽四重奏団カルテット・フィデス(ヴァイオリン松山古流さん、ヴァイオリン熊谷洋子さん、ヴィオラ御供和江さん、チェロ石井忠彦さん)です。

さて、今回のツアーの最終公演は気仙沼市最初の災害公営住宅だった南郷住宅に伺いました。大規模な住宅なので集会所も広々としています。
じつはこの住宅の集会所(南郷コミュニティセンター)のオープニングイベントでカルテット・フィデスが演奏したというご縁があります。あれから数年経って南郷住宅の皆さんはどんな様子でしょうか。
リハーサルの音に誘われてか、開場時刻のだいぶ前からお客さんが顔を出し、演奏家は「どうぞどうぞ」と気さくに席をすすめていました。
どこの会場でも来場者は恥ずかしがって後ろの席からぽつぽつと座り始めるのですが、ここはだいぶ様子が違いました。最前列からぐんぐんと積極的に埋まってゆきます。「〇〇ちゃん、ここ!」と座席を確保して待っている人や、後方に座っている知り合いを見つけて「あらなんだや、前さ来たらいいっちゃ」と誘う人などがいて、客席誘導が不要なくらい。みなさんが演奏を楽しみにしていたことがよくわかりました。ありがとうございます。
想定していた人数を大きく上回る45名の来場者があり、タイトルの「そよかぜコンサート」に反して熱気を感じるほどでした。
さあ、開演です。御供さんが「ただいまー!」と呼びかけると客席からは「おかえりなさーい!!」と大きな返事がありました。すごいノリですねえ。

今日のプログラムには定番クラシック曲のほかに、南郷スペシャルとして『蘇州夜曲』『美しき天然』など古き良き時代の曲が用意されていました。かねてからのリクエストだったのです。
特に『美しき天然』をリクエストしてくださった方は、震災後の復興工事のために姿を変えてゆく故郷や失われゆく自然に心を痛めて、せめて歌の中に残る自然の美に思いを馳せたいとのお気持ちがあったのだそうです。
そのほかにも森進一のヒット曲『港町ブルース』を弦楽用にアレンジして初披露しました。全国の港町を織り込んだこの歌には気仙沼も歌詞に出てきます。もちろんみなさんに一緒に歌っていただきました。弦の調べに歌声が合わさって大きなうねりを作り出します。フィデスのみなさんはよく「一緒に音楽しましょう」という言い方をするのですが、言い得て妙だなあと傍で見ていて思いました。
アンコールで「それではみなさん、『北国の春』も歌ってください!」と誘うと客席から「よろしくお願いしまーす!」と返事が自然に返ってきました。こういうやりとりがまた愉快ですね。
時間はあっという間に過ぎて、大喝采の中、終演となりました。 出口ではお客さんと演奏家たちが言葉を交わし、とても賑やかです。「来てくれてありがとう」「また来てね!すぐにでも!」「いつでもいいよ!」と熱いお声をたくさん頂戴しました。みなさんの笑顔に演奏家もまた元気と勇気をたっぷり受け取った様子です。
また会いましょう。ありがとうございました。